2017 Fiscal Year Research-status Report
Statistical physics on structure and dynamics of microcracks in thermally activated breakdown of heterogeneous materials
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17K14360
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉岡 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (10548209)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統計物理学 / 破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイバーバンドル模型のフレームワークを用いて、不均一材料の熱活性クリープ破壊に関し、特に亀裂の発生地点間距離について研究を行った。我々が最近提案した、動的モンテカルロ法による数値計算を用い、温度T、外部応力σ、そして、材料特性の一つとして、壊れたファイバーにかかっていた荷重が他のファイバーに移る際の距離依存性にかかわるパラメタαを様々な値に変えてシミュレーションを行った。 その結果、亀裂発生地点間距離の分布について、非自明なべき分布が一部のパラメタについて得られることが分かった。このようなパラメタは、以前の我々の研究(αは無限大に対応)で破局的破壊の起こる前に応力集中が生じるパラメタに近く、関連性が示唆される。また、スケーリング関数を仮定することで、この分布についてデータコラプスができることが分かった。この「臨界指数」はTやαに依存しているが、特にTについて非単調な依存性を示すことが分かった。 また、亀裂発生地点間距離と他の観測量との関係も調べた。観測量としては、破壊のダイナミクスでよく調べられる、バーストサイズ(実験では音響放射の振幅から計算される微小亀裂発生のエネルギーに対応)と破壊イベントの待ち時間に注目した。その結果として、それらの観測量の間にべき的な関係が観られることが分かった。この結果は、関数形の具体的なパラメタ依存性が明らかになれば、破局的破壊の予測につながると期待できる。 これらの結果は、日本物理学会の秋季大会で報告した他、国際研究会で3回報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画時点では、本年度は(1)考えられる様々パラメタの中から重視すべきものをいくつか選び数値実験を行い、(2)亀裂の発生地点間距離の分布や(3)構造エントロピーの時間依存性の解析を行う、ということを想定していた。この中で(3)は行わなかったが、(1) は当然行った上、(2)については元々想定していなかった、亀裂発生地点間距離の分布についてスケーリング形があるということが分かった。また、亀裂発生地点間距離とバーストサイズや待ち時間との間にべき的な関係性があることも分かった。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
亀裂発生地点間距離について、分布のスケーリング形やバーストサイズなどとの関係性は、最終的な目標である破局的崩壊の予測に関連しうるものと考えており、興味深い結果であった。そこで、平成30年度では、これらを重点的に調べるというのを主たる研究課題としたい。例えば、パラメタ依存性について、平成29年度はやや荒い調査をしていたため、以前我々が発見した熱活性破壊の相転移との関係性や、通常のファイバーバンドル模型で知られているαを変更したときの相転移などが熱活性破壊でも観られるか、観られるとしたらそれが亀裂間距離の分布の違いを説明できるのか、ということを調べる。そのために、T、σ、αについて、より細かい値までシミュレーションを行う。また、材料に関するもう一つのパラメタとしてファイバーの強度分布に関するクエンチ乱れのパラメタや、クエンチ乱れの分布関数そのものを変更して、それらの結果がどの程度普遍的なものなのかを調査する。 また、研究開始当初に予定していたとおり、離散要素法シミュレーションの準備を行う。
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Causes of Carryover |
もともと共同研究者のいるハンガリー、デブレツェンへ2週間ほどの訪問を予定していて、1月から2月ごろに行くことを考えていた。しかしながら、親族の入院があったため、予定を中止した。 そこで、元々予定していたハンガリー訪問の他に、主に前年度の結果を国際研究会で報告するための旅費に当てる。
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