2017 Fiscal Year Research-status Report
フラストレート格子上ボース粒子系における量子液体相の探索と励起構造の数値解析
Project/Area Number |
17K14361
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
正木 晶子 国立研究開発法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 基礎科学特別研究員 (00620717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計算物理学 / 冷却原子 / 統計物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子相転移を正確に理解するためにまず、申請者が開発して来た量子モンテカルロ法のための新しいアルゴリズムである並列化マルチワームアルゴリズムに有効な有限サイズスケーリング法を考案しデモンストレーションに成功した。 本研究で用いる量子モンテカルロ法は、ファインマンの経路積分表示に基づく世界線モンテカルロ法であり、有限温度量子系を厳密に計算できる。世界線はワームと呼ばれる世界線の不連続点がモルコフチェーンに基づいて時空中を動き世界線配位を更新する。このアルゴリズムでは、相転移に本質的に影響する系のサイズについては並列計算によって解決できるが、並列計算のために導入されたワームが2次相転移の際に発達する相関長を断つために、従来の有限サイズスケーリングを用いることができなかった。 本研究では、3次元ボース粒子系の超流動転移(2次転移)に対してワームのソース場も含めた有限サイズスケーリングを実行することで、有限サイズスケーリングを行うデモンストレーションを実現した。スケーリングは2変数のフィッティングを行うことになるため通常は困難であるが、ベイズ推定法を用いたスケーリングツールを応用することで、1変数のサイト同等に精密な相転移点の推定を行うことができた。 また、本研究で用いるハードコア・ボース・ハバード模型で化学ポテンシャルがちょうどparticle-hole対称性がある場合に相当するスピン模型であるハイゼンベルグ模型で、量子モンテカルロ法と数値解析接続を組み合わせて励起状態を調べる研究を行った。この研究で用いた方法は本研究のメインテーマの1つである量子液体相の相判別に役立てられると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である大規模ボース粒子系の有限温度相図を書くために必要となる有限サイズスケーリング法をデモンストレーションできたとこは大きな進展であり、研究目標の達成に大きく近づいたといえる。しかし、本研究で用いる模型で量子液体相が存在するとすると、この相には自発的対称性の破れによって発現する秩序変数が存在しないため、通常の量子モンテカルロ法では相状態については間接的な情報しか得られない。しかし、数値解析接続手法を用いた励起状態を調べる方法に目処がたったため、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で量子液体相の判別については、機械学習手法を応用した新しい相判別法を考案することで解決を模索する。近年機械学習手法、具体的にはニューラルネットワークなどの深層学習による画像識別法を応用して、古典スピン模型などの相判別を行い、よく知られている相転移の問題をデモンストレーションすることが実現されている。量子モンテカルロ法でも、d次元量子系はd+1次元古典系の世界線配位で描け、古典系と同様に画像解析手法を適用できると考えられる。 また、我々が最近論文誌に投稿した研究の一つで、量子モンテカルロ法と確率的最適化法による数値解析接続を組み合わせて励起状態を調べたが、この方法を本研究でも用いて励起スペクトルを調べることで、秩序変数が存在しないような相でも他の相との違いを調べるのに有手段となると期待できる。
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Causes of Carryover |
スラスター計算機の購入を想定していたたが、大規模計算の方が効率的に結果を出せるとの判断に至ったため、年度を改めてスパコンの利用権購入に得てることに変更した。
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Research Products
(9 results)