2017 Fiscal Year Research-status Report
冷却フェルミ気体における輸送現象の非線形応答理論を用いた探索
Project/Area Number |
17K14366
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
内野 瞬 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (80617465)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 冷却原子気体 / メゾスコピック系 / 非平衡物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本研究課題の大きな柱である、(1)光共振器中で強く相互作用するフェルミ気体の研究と、(2)強く相互作用するフェルミ気体超流動における熱伝導に関する研究を行った。 (1)に関しては、東大・理研の上田正仁教授とEPFLのJean-Philippe Brantut教授と共同で、強く相互作用するフェルミ気体において普遍に生じるヒーティング現象やノイズスペクトルを明らかにした。より具体的には、原子と光子の相互作用を通して、これらの物理量が、高周波数での密度・密度相関関数で記述され、高周波数領域においては密度・密度相関関数が、Tan定数という系を特徴づける普遍定数によって記述されることを明らかにした。さらに光共振器中での2端子輸送系を考えることで、これまで測定できなかったカレントノイズが、光子のホモダイン測定により測定可能となることを示した。これによって、冷却原子気体を用いたメゾスコピック伝導に関する研究の幅が大きく広がることになる。この研究に関する成果は現在、論文にして投稿中である。 (2)に関しては、Bogoliubov-de Gennes方程式を用いたアプローチと準古典グリーン関数を用いたアプローチの両方で定式化を行った。前者はメゾスコピック伝導チャンネルの透過率のエネルギー依存性を取り入れることができ、実験との比較の際に有用だと考えている。後者は高次相関を議論するのに有用であり、理論的な問題を考える上で重要である。現在、それぞれのアプローチで数値的な解析を行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光共振器中で強く相互作用するフェルミ気体の研究論文を投稿することができたこと、また、フェルミ気体超流動の熱伝導を扱うための定式化ができたことが大きい。加えて、本研究の基礎となる論文が、Physical Review Letters誌に出版されたことも重要であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
光共振器中で強く相互作用するフェルミ気体は、興味深い課題が浮き彫りになったため、中心的に取り組んで行きたいと考えている。フェルミ気体超流動の研究は、次年度中に完成に漕ぎ着けたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じているものの少額である。次年度は当初本年度に予定していたパソコン購入(30万円程度)を行いたい。残りの予算は書籍購入や旅費・国際会議参加費にあてていく予定である。
|