2017 Fiscal Year Research-status Report
Unveiling thermally activated dynamics in liquids and microscopic origin of viscosity
Project/Area Number |
17K14371
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Van Hove function / 非弾性X線散乱 / 実空間実時間相関 / 水のダイナミクス / 液体の運動論 / シミュレーション / 粘性起源 / 重水 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は粘度を代表とする液体の輸送特性の原子レベルの起源を明らかにするために,計算機シミュレーションとX線および中性子散乱実験を実施した. 平成29年度は,実験的研究を優先して実施した.兵庫県に設置されている大型放射光施設巣ピリング8(SPring 8)で分子性液体である水や塩水(NaCl, CeCl)の非弾性X線散乱実験を行い,非弾性X線散乱データを取得した.この実験データから実時間および実空間相関関数,つまり水に対する van Hove function をX線を用いて求めることに成功し,巨視的な粘度との相関関係を議論することが可能となることを明らかにした.これは実空間解析の重要性を示唆している重要な成果である.同様に純水と重水のデータから実時間相関解析を行い,これらの結果は米国物理学会で報告した.また,荷電コロイド微粒子分散系のダイナミクスを測定するために台湾のX線放射光施設でXPCS測定を行い,データ取得を行った.同様の系でコロイドシミュレーションも行い,直接比較が可能か検討した. 計算機シミュレーションでは, 水の大規模計算を行い,これらの結果から実時間・実空間相関関数および配向相関関数を計算した.これらの動的な緩和過程と非弾性X線散乱の実験データを直接比較し,古典的な水のモデルはうまく実験データを説明できないことがわかった.したがって,非弾性X線散乱で得られたデータは,水の構造や動的特性モデリングのための基礎データとして非常に価値の高いデータとなると期待できる.また,計算された配向相関関数を直接実験と比較するために,水や塩水の誘電緩和測定を実施した.その結果,配向緩和時間は10ps程度でシミュレーション結果とよい一致を示すことがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも実時間実空間相関関数の取得に成功という実験的研究に格段の進展があり,集中的に注力を注いだために計算機シミュレーションを使った理論的研究の進展はやや遅れている。総合的に見れば、ほぼ計画どおりの範囲内という進捗状況であると考えている.さらにスピード感をもって研究推進するために,計算機シミュレーションのデータ解析に重点をおくことを心がける.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在,液体金属のシミュレーションを実施し、原子レベル応力や弾性率を時系列データを取得している.これらのデータから原子間結合の切り替えを明確にし,その実空間実時間相関を測定する予定である.また,さまざまな種類の塩を添加した水溶液の非弾性X線散乱実験を予定しており,実時間実空間相関データを取得し,粘性起源解明に迫る予定である.
|
Causes of Carryover |
当初利用を予定していた大型計算機が新しいシステムに変更したことにより平成29年度を通した計算機の使用が困難となったために,次年度予算額が生じた.この間,次年度利用可能な大型計算機の状況を調査しており、翌年度分と今年度分の合わせた予算を大規模計算機の使用料に使用する.
|
Research Products
(4 results)