2017 Fiscal Year Research-status Report
Realization of the ground state of liquid by confinement of nanopores, and the investigation of its molecular arrangement structure
Project/Area Number |
17K14372
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
名越 篤史 国士舘大学, 理工学部, 講師 (70750579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガラス転移 / メゾスコピック / 熱力学第3法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画に従って断熱型熱量計を用いてメソポーラスシリカ細孔中のトルエン(細孔直径2.6 nm, 3.8 nm, バルクの3種類)について測定した。試料に用いたメソポーラスシリカは自身で合成するか、太陽化学から提供された。ベンゼンと異なる挙動を示していて、特に、170 K付近に細孔の軸方向の濡れに関するガラス転移と推測される熱異常が観測されているのが興味深い。今後、6 nm、8nm程度の比較的大きな細孔と、2 nm程度の小さな細孔でのトルエンの熱容量を測定して細孔に封じたトルエンの挙動を理解しようと考えている。
同様に計画に従って、蒸気圧測定装置の作製を行い、バルクの水の蒸気圧測定によりその性能評価・課題の検討を行った。満足できる測定精度であったが、空気漏れが想定よりも小さいため、より高い測定精度の実現を期待して、圧力計を変更し、クライオスタッドの作成に取り掛かった。当初蒸気圧測定と浸漬熱測定からエントロピー変化を測定することを計画していたが、蒸気圧装置の性能を考慮して、蒸気圧の温度変化からエントロピーを測定することに計画を変更した。
また、断熱型熱量計を用いて、架橋デキストランゲルSephadexに吸収した水(吸収量がゲルとの重量比でh= 0, 0.188, 0.273, 0.500の4種類)の熱容量及びガラス転移挙動を測定した。Sephadexに吸収した水は、シリカ細孔と同程度の小さな穴に閉じ込められているが、基質の運動により、水だけが低温で凝集するためメソポーラスシリカに封じた水と異なる挙動を示した。現在、申請者が行っている研究をより広い対象に拡大していく中で重要な知見を得られると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
断熱型熱量計による熱測定については、相応の謝金を払って外部協力者の協力を仰ぐことによって、装置のトラブルがなく計画以上にうまく進行している。 蒸気圧測定装置については計画を少し変更した。当初、蒸気圧測定装置の作製にあたって、問題となるのは平衡値をとるまでの時間と、その間に試料容器内に空気漏れが生じないかということであった。このため、長時間の追跡実験を行わずに済むように、蒸気圧測定と浸漬熱測定を組み合わせることを計画した。昨年度に作製した蒸気圧測定装置では、この問題が解決されていることがわかったため、測定の精度を考慮すると、蒸気圧の温度依存性からエントロピーを求めた方がより信頼性の高いデータが得られると判断した。この場合、高い精度の温度制御が求められ、温度制御装置の作製に取り掛かっているため、蒸気圧の測定は少し遅れているが、問題となる程度ではなく平成30年度中に測定できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度については、これまで通り断熱型熱量計による熱測定を行うとともに、蒸気圧測定装置の改良と、それを用いた測定を行う。蒸気圧の温度依存性の測定がうまくいけば浸漬熱測定を減らすことができる。また、シリカ細孔だけでなく新たにハイドロゲル中の水についても同様の実験を行うことを計画している。それによって、液体だけでなくさまざまな吸着物質に広く議論できる実験結果を得られることを期待している。 また、放射光施設等での構造解析実験について計画書を提出して使用を狙う。
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Causes of Carryover |
蒸気圧測定装置の設計を変更したため、当初の予定通りに装置の部品・材料を購入できなくなった。今後、変更した温度制御に関する部品・材料を中心に平成30年度に使用する予定である。
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