2018 Fiscal Year Research-status Report
微小地震への短周期地震波解析手法の適用による地震発生準備過程の解明
Project/Area Number |
17K14377
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 圭佑 東北大学, 理学研究科, 助教 (20743686)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 応力場 / 前震 / 群発地震 / 破壊伝播指向性 / メカニズム解 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究では,1) 微小地震の震源過程の推定手法を確立し,その適用を 2)日本国内で近年発生し,顕著な前震活動を伴った 3つの地震活動,および 3) 2011年東北沖地震による内陸の誘発地震活動に対して行った。 1) 微小地震の地震波形解析アルゴリズムを構築し,微小地震の多くが顕著な破壊伝播指向性を示すことを明らかにした。短周期波形を用いて,小中地震の断層面解を効率的かつ高精度に推定する手法も確立した。これらのことにより,通常直接的な推定が困難である小中地震の断層方向や破壊伝播速度について情報が得られるようになった (学術誌に投稿中)。
2) 日本国内で近年発生し,顕著な前震活動を伴った 3つの地震 a) 2016年鳥取県中部地震,b) 2017年鹿児島湾の地震,c) 2017年秋田県大仙市の地震についての解析を行った。前震震源の移動現象や震源過程などから、地震発生に関わる非地震性過程について情報抽出することができた。これらの地震活動について,本震発生前の顕著な応力場の擾乱は検出されなかった。このことは,地震発生場の偏差応力の大きさが,非地震性過程によるそれに比べて大きいことを示唆する。(b)について解析と研究発表を行った修士学生の松本圭晶さんは,その発表により2018年地震学会学生優秀発表賞を受賞した (上記 3つの解析結果について学術雑誌への投稿準備中)。
3) 小中地震の震源の移動現象・応力場の情報に基づき,2011年東北沖地震後の内陸の誘発地震活動の発生機構を統一的に説明することに成功した。その成果は,2本の学術誌および 1本の広報紙に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
短周期地震波形を用いることにより,小中地震の断層面解を効率的かつ高精度に推定する手法を確立させた。更に,観測データに,これまで小中地震について無視されることの多かった破壊伝播指向性が明瞭に表れていることを見出し,それらを活用することにより小中地震の震源過程や断層構造の詳細な情報を求めることができることを示した。このことは,地震発生場の情報を取り出すために今後重要な役割を果たすと考えられる。これまでに確立させた解析手法の実際の地震データへの適用も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに解析を進めてきた 3つの地震 a) 2016年鳥取県中部地震,b) 2017年鹿児島湾の地震,c) 2017年秋田県大仙市の地震について得られた解析結果について情報収集を継続しながら,内容をまとめ学術誌に投稿する。 今年度までに確立させた手法を,M~7地震 (2008年岩手・宮城内陸地震,2016年熊本地震)の前震活動・余震活動の場合にも適用し比較することにより,地震発生準備過程における総合的な知見を得る。
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