2017 Fiscal Year Research-status Report
惑星探査機搭載能動型蛍光X線分光計の高精度軽元素分析
Project/Area Number |
17K14381
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長岡 央 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (10707805)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 蛍光X線分析 / 惑星探査 / 元素組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、将来の惑星“着陸探査”に向けて、惑星の起源と進化の解明に繋がる惑星物質の元素情報を詳細に解読するため、その場での高精度・多元素同時分析が可能な“能動型蛍光X線分光計”の開発を行うことである。生命発生の前駆環境形成に必要不可欠な軽元素分析のために、本研究では“シリコンナイトライド(Si3N4)”を大面積シリコンドリフト型X線検出器(SDD)の電極面に形成してウィンドウとして用いることで、軽元素の検出効率が大幅に向上した惑星探査用X線分光計の開発を目的とする。 本年度はAmptek社で市販されているSi3N4ウィンドウ型SDD(XR-100FASTSDD-C2,Si3N4厚40nm)を購入し、検出器の性能評価を行うため高真空下での実験系を構築した。X線発生装置から発生するMoのL線を計測し、その性能を従来のBeウィンドウ型のSDDと比較した。MoのL線のエネルギーは2.29 keVであり、Si以下の軽元素を効率的に励起することができる。実験の結果、従来のBeウィンドウ型のSDDと比較して、Si3N4をウィンドウに用いたSDDは低エネルギー側でのX線透過率が非常に高いため、MoのL線エネルギー以下のX線をより高効率で観測することができた。 一方で、今回の実験結果を従来の焦電結晶型X線発生装置の開発にフィードバックしていく過程で、高真空下で焦電結晶を用いたX線発生実験を行った。その結果から、封入する気体の真空度が発生X線の強度に大きく影響を与えることが本研究にて明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用予定であった焦電結晶型X線発生装置の使用過程において、X線強度の封入ガス圧力依存性が明らかとなった。この実験結果から、大気が薄いもしくはない天体表層を模した実験系においては、軽元素を励起するのに十分な蛍光X線が得られないことが明らかとなった。そこで本研究とは別に、焦電結晶のバックアップとして開発中であったCNT(カーボンナノチューブ)を用いたX線発生装置をこちらの実験でも発生装置として用いるために基礎実験を行い、その有用性を検討してきた。その期間があっため、予定より遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
CNT型発生装置の使用準備については平成29年度中に基礎実験を行い、その性能を評価した結果、本研究においても使用が有用であると結論した。平成30年度以降の本研究計画では、このCNT型発生装置をX線発生装置として用い、検出器(fast-SDD)の性能評価を行う。さらにその実験結果から、宇宙機への応用を見据えた検出器の研究開発を行う。CNT型のX線発生装置の開発・改良については、申請者が平成30年度から平成32年度まで受給する特別研究員奨励費(課題番号18J01786)を用いて行う。これらは将来探査用能動型蛍光X線分光計の研究開発という点で共通であるが、こちらは分光計の検出器開発が目的であり、奨励費はX線の励起源となるCNT型発生装置の開発が目的である点が異なる。
|
Causes of Carryover |
Amptek社のfast-SDDの価格変動のため、より安価に購入ができたため、物品費に差額が生じた。 翌年分として請求した助成金は当初の予定通り、成果発表のための国内旅費と海外旅費、成果物の出版料に用いる。 差額に関しては、前年度の高真空実験の結果、真空計のフィラメントが消耗し、交換の必要がでたので、その費用に充てる。また残りは平成30年度に研究室を移ったため、不足している真空実験に必要となる物品・消耗品の購入などに充てる。
|
Research Products
(2 results)