2019 Fiscal Year Research-status Report
マグマの流動プロセスと火山性長周期地震に与える影響の解明
Project/Area Number |
17K14383
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
黒川 愛香 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 特別研究員 (40784715)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マグマ / レオロジー / 火山 / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現実的なマグマや溶岩の流動を支配する非定常マグマレオロジーを実験から明らかにし,そのマグマレオロジーが長周期地震へ与える影響を評価することで噴火のメカニズムの解明に繋げることを目的としている.昨年度までの研究からは,非定常状態のマグマは時間依存性やヒステリシスを強く示すことが明らかにされた. そのことを考慮し,本年度は非定常状態にあるマグマの更に詳細なレオロジー的特徴を抜き出すことに注力した.実験システムについては,今までより安定した高温状態を実現するため,SiC発熱体を搭載したマッフル炉を導入して改良を行った.実験備品も,測定中のるつぼのズレを防ぐために滑り止め加工をしたところ,測定誤差が大きく減少した.昨年度までの研究からマグマレオロジーは測定前の状態によって異なる挙動を示す結果が得られたので,本年度はこの改良したシステムで実験前にサンプルを静置させるプロセス(静置時間)での条件が後続する本実験に与える影響について主に調べた. 実験は1986年伊豆大島噴火のB1溶岩を用いて固液二相が共存する1180℃で行った.電気炉上部の穴から粘度計に接続されたロッドを炉内のサンプルに挿入し,一定のせん断速度で回転させて応力値を測定した.その結果,1時間の静置時間では完全静止の場合だけでなく有限のせん断を加えた場合でも応力にオーバーシュートや変動が出現した.せん断速度が大きくなるとこれらは不明瞭になるが,長い静置時間(18時間)を置くことでオーバーシュートと応力変動は出現した.従って静置時間と静置中のせん断速度がレオロジーを決める要因であると言える.このことは実際のマグマや溶岩も完全に停止していない状態でも内部で流れを妨げるプロセスが進行する可能性を示唆しており,モデルを構築する上で重要な特徴だと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験からは実際のマグマや溶岩の流動を考える上で重要な非定常状態におけるマグマレオロジーの性質が新たに解明され,順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,まず実験で得られた時間依存する非定常状態のマグマレオロジー的特徴の原因を探るため,結晶同士の相互作用を電子顕微鏡やCTを用いて観察することを計画している.これは当初の計画になかった内容だが,本年度得られた知見の理解には不可欠な研究内容であると考えている.同時に,実際の溶岩流モデルに非定常マグマレオロジーの特徴を組み込む方法を考える.
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Causes of Carryover |
実験で使用するロッドやるつぼ等の備品の設計を工夫し、価格を抑えることができたため。
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Research Products
(1 results)