2017 Fiscal Year Research-status Report
変位速度場の空間勾配解析に基づく東北日本下のプレート固着域下限の時空間変化の解明
Project/Area Number |
17K14387
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
飯沼 卓史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究員 (10436074)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プレート間固着 / 変位速度場 / 時空間変化 / 周期的変化 / 東北日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北日本下に沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートとの固着域に関して,その下限(深い側の端)の深度及びその時空間変化を,GNSS観測から得られる変位速度場の空間勾配解析に基づいて推定するため,数値計算テスト及びデータ解析を行った. プレート境界面上に設定する固着域の深度を変えて,既在のGNSS観測点で観測されるべき変位速度を計算し,海溝軸に直交する方向に帯状の領域を設定したうえで,その範囲に含まれる観測点での変位速度を用いて水平及び上下の変位速度の空間勾配値を求めた.ここまではIinuma [2018, GJI]で行った数値計算テストと同じだが,今回は,変位速度の空間勾配値を求める際に使用するGNSS観測点を,それぞれの点の海溝軸からの距離に基づいて取捨選択することとした.具体的には海溝軸からの距離D[km]までの範囲の観測点を用いて変位速度の空間勾配を計算するとし,このDを,プレート境界面の深度ごととに,そこでのプレート間固着率の変化によって生じる,変位速度の空間勾配値の変化が最も大きくなるように決定した.すなわち,各帯状領域下で,プレート間固着が変動する深度と,変位速度の空間勾配の変化によってその深度での変動をもっともよく捉えられる観測範囲との,対応関係を導出した. 上記の数値計算テストによって得られた対応関係が意義あるものとなっているかどうかを確認するため,実データを用いた解析を実施した.各帯状領域において,プレート境界面の各深度に対して求められたDの値を適用して変位速度の空間勾配値を求め,その時間変化の卓越周期と,Uchida et al.[2016]で求められた,小繰り返し地震の解析に基づくプレート間固着の変動の卓越周期との比較を行い,概ね整合的であるとの結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた数値計算テストを順調に実行でき、次に行うべき実データ解析に移行するに十分な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の数値計算テストの結果を踏まえ,実際のGNSS観測データを用いた解析を進め,プレート境界面の固着域の下限深度の時空間変化を追跡する.得られた結果と先行研究との比較により,歪エネルギーの収支を考察し,成果を論文として学術雑誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
交付申請書作成時点においては、本研究課題に関する成果をAGU Fall Meetingにて発表する予定だったのだが、他の研究課題による成果を同学会で発表することとなり、投稿数制限により、本課題の成果発表を行うことができなくなってしまったために、次年度使用額が生じた。 次年度に別の学会において研究成果の発表を行い使用する見込みである。
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