2020 Fiscal Year Research-status Report
海盆間相互作用を介した西大平洋-インドモンスーンと台風の年々変動メカニズムの解明
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17K14395
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
高谷 祐平 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (30782289)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アジアモンスーン / 台風 / 季節予報 / 海盆間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 2019年の顕著なインド洋ダイポールモード現象に続く、2020年初夏のインド洋の昇温、梅雨・メイユの活発化の要因を分析し、論文にまとめた (Takaya et al. 2020, Geophys. Res. Letts.)。本論文では、 2019年の顕著なインド洋ダイポールモード現象とインド洋から西太平洋の海面水温の三極パターンが、記録的強さの海洋沈降ロスビー波を南インド洋亜熱帯域に生じ、その後のモンスーン循環の弱化を通じて、北インド洋の海面水温を昇温し、それが、梅雨・メイユを活発化したメカニズムを説明した。本事例は、エルニーニョ現象を伴わないインド洋ダイポール現象単体でのインド洋昇温を引き起こす新たなプロセスの可能性を示唆する。 さらに、2010年夏季の北熱帯大西洋の高い海面水温の事例について解析し、アジアモンスーンへの2つの熱帯経路を通じた影響を解析し論文にまとめた(Takaya et al. 2021, J. Climate)。北熱帯大西洋の海面水温感度実験を解析した結果、大気赤道ケルビン波による「東向き経路」とウォーカー循環の変調およびラニーニャへの遷移強化を通じた「西向き経路」を通じた影響メカニズムが明らかになった。このことは、大気海洋結合プロセスを通じた海盆間相互作用によって、熱帯大西洋がアジアモンスーンに影響することを示している。 以上、2つの研究は、熱帯太平洋(ENSO)以外の、夏季アジアモンスーンへの影響を解明するものであり、海盆間相互作用を介した西太平洋ーインドモンスーンの変動メカニズムの理解を深化するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は2019年に発生したインド洋ダイポールモード現象の速報的解析を優先したため、当初の一連の解析結果を包括的に分析し、台風活動と夏季アジアモンスーン変動の統合的な理解をまとめる作業が遅れている。しかしながら、インド洋ダイポールや熱帯大西洋など、当初に予定していなかった、本研究を拡張した研究成果も得られている。また、アジアモンスーンと台風活動の1年先予測を総合的に議論した論文が投稿中であり、来年度中には、研究成果が得られると見込む。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度には、アジアモンスーンと台風活動の1年先予測を論じた論文等で、本研究の総合的な知見を成果としてまとめる。インド洋の台風活動に与える影響、およびENSO、熱帯大西洋、インド洋による海盆間相互作用によるアジアモンスーンの変動については、着実に成果が出ており、本研究期間内に当初の研究目的を達成できる計画である。さらに、進行中であるマルチモデルによるアジアモンスーン予測についても解析を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大に伴い、国際学会への参加費・旅費の支出がなく次年度使用額が生じた。当初計画になかった1年予測実験の大規模実験を実施したことでデータ保存のためのストレージが必要であることなどから、必要なハードディスク、ストレージを調達し確保する計画である。
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Research Products
(6 results)