2017 Fiscal Year Research-status Report
Crustal extension and shortening in the forearm region of the Northeast Japan arc since Miocene time
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17K14404
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡田 真介 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50626182)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地下構造 / 反転テクトニクス(インバージョンテクトニクス) / ハーフグラーベン構造 / 正断層構造 / 逆断層 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北日本弧は,日本海拡大時に引張場にあり,東北日本背弧域(日本海東縁の沿岸域)では,深部で低角となる正断層の活動により,地殻が大きく引き延ばされた(伸張量40-50 km程度)。その後,圧縮応力に転換した鮮新世以降(約350万年以降)には,日本海拡大時に正断層として活動した断層が,逆断層として活動し大きな地殻短縮が生じている(短縮量 15 km程度)。本研究の対象地域である東北日本前弧域(太平洋側)でも,背弧域よりも伸張量および短縮量は小さいものの,日本海拡大時以降の地殻変形が生じている。本研究では,東北日本弧前弧域で発生した日本海拡大時以降の地殻変形量を定量化することを目的として、研究を行った。 平成29年度には,まず対象地域である仙台湾周辺の既存海域反射法地震探査データの再解析および同時に取得された重力データの解析を行い,地下の地質構造の把握を行った。反射法地震探査データの再解析では,フィルター処理を変更する等の工夫をし,イメージングの改善に努めた。反射法地震探査の再解析結果からは,西に傾く正断層と,正断層の活動と同時に堆積したと考えられる地質構造(ハーフグラーベン構造)が明らかになった。また,この地質構造は,鮮新世以降の逆断層運動によって浅部が変形を受けていることも明らかになった。これらの構造の一部には,反射法地震探査の再解析において,多重反射等の影響により,イメージングが良くない部分もあったが,重力探査のデータと比較することによって,ハーフグラーベン構造の存在を決定づけることができた。 既存の重力データのデータファイルの破損により,全ての測線のデータを読み込むことができなかったため,データ破損部分はダンプデータ(紙面)からデータを再現した。この作業に多くの時間を要した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通り,平成29年度には,既存反射法地震探査データの再解析および同時に取得されている重力データの解析を行った。 反射法地震探査データの再解析からは,仙台湾に南北方向に3~4条のテクトニックインバージョン(日本海拡大時に正断層として活動し,圧縮応力を受けた350万年以降では逆断層として活動している)を示す地質構造の存在が明らかになった。 重力データの解析では,データファイルの一部破損により,紙面データからデータを再現したため,これに多くの時間を必要とした。反射法地震探査の記録が不明瞭である部分では,重力データと比較することによって,地質構造を推定することが可能となり,重力データは非常に有効なデータの1つとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では,平成29年度に再解析を行った既存海域反射法地震探査データおよび重力データを基にして,地質構造断面図を作成する(この地質構造断面図は平成31年度の地殻伸張量/短縮量の計算に用いられる)。地質構造断面図の作成には,活断層のジオメトリ等も含めて統合的に解釈を行う必要がある。東北日本弧は,中新世以降,複雑な構造発達史を経験しており,中新世(約3000~1300万年前)には,日本海拡大に伴った伸張場にあり,研究対象地域では,西傾斜の正断層構造(ハーフグラーベン構造)が形成され,正断層構造の形成と同時に堆積した地質構造が発達している。その後,約10 Ma(1000万年)の静穏期を経て,鮮新世以降(約350万年以降)には,圧縮応力場に変化した。中新世に正断層として活動した地質構造は,逆断層として活動(テクトニックインバージョン)を開始し,短縮変形を受けている。再解析を行った反射法地震探査データおよび重力データからは,東北日本弧の地質構造発達史を踏まえて,(1)中新世の伸張変形と共に堆積した正断層構造,(2)その後の静穏期に((1)を覆うように,もしくは埋めるように)堆積した地質構造,(3)テクトニックインバージョン後の短縮変形構造(growth structure)を読取り,地質構造発達史を理解する。これらと共に地下の活断層のジオメトリについても,解釈を行う。最終的な成果(中新世以降の地殻伸張量・短縮量の計算)には,東北日本弧が経験してきた構造発達史と整合的でなければならないため,平成30年度に実施予定の地質構造解釈および地質構造断面図の作成には多くの時間を要すると考えられる。
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Causes of Carryover |
既存のデジタルデータの一部が破損しており,紙面データからの入力業務を依頼する必要があったため,当初の予定を変更した。そのため,使用予定額との差額が発生した。また,紙面データからのデータ入力作業に時間を要したために,これらのデータを使った解析作業のデータ入力補助(人件費・謝金)を行うことができなかった。平成30年度にこの作業を実施する。
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Research Products
(2 results)