2017 Fiscal Year Research-status Report
非晶質炭酸カルシウムの構造解析による結晶化過程へのアプローチ
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17K14414
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有馬 寛 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60535665)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非晶質炭酸カルシウム / 構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
非晶質炭酸カルシウム(ACC, 化学式CaCO3・nH2O)は炭酸カルシウム結晶相の様々な多形に変化することが知られており、生体鉱物や機能性材料の観点から注目されている。本研究では非晶質炭酸カルシウムのフレームワークと含水量および結晶化過程の相関を解明することを目的とする。本年度は、(1) 非晶質炭酸カルシウムの合成と含水量の制御、(2) 結晶化過程のその場観察、(3) 放射光X線を用いた構造解析を行った。(1)について、Mg/Ca比が異なる複数のMg添加非晶質炭酸カルシウム(Mg-ACC)を合成し、熱分析(TG-DTA)により含水量について評価した。Mg-ACCの重量減少には複数のステップが観察された。水がMg-ACCにおいていくつかの存在形態をもつことが予想される。また、Mg-ACCに関しては350℃付近に発熱ピークが観察できる。結晶化プロセスがACCよりも高温で起こっていることが考えられる。(2)についてMg-ACCでは温度23度および相対湿度50%の条件において、ACCよりも非晶質構造が安定であり、ACCが結晶化に至る時間を超えても非晶質構造が維持されることがわかった。(3)について、XAFS測定からMg-ACCのCa周囲の最近接構造はアラゴナイトと類似しているという結果が得られた。また、Mg量の増加に伴い、構造のランダム性が増す傾向が観察された。XRD測定の結果ではMg添加により陽イオン間距離が増加する傾向にあるという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非晶質炭酸カルシウムのフレームワークと含水量および結晶化過程の相関を解明するという目的に対して、初年度である本年度は非晶質炭酸カルシウムの合成と熱物性評価および放射光X線を用いた予備的な構造評価に成功した。これらの成果により、当初の計画通り、次年度以降には水の存在状態のより詳細な観察と複数種の量子ビームを用いた構造解析の実施が可能であると考えている。以上の理由からおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、水の存在形態とその含水量による変化に着目しACCの構造の観点からアプローチする。研究の遂行にあたっては実験室系でのX線試料環境の整備を行うとともに外部の放射光施設(KEK-PF, SPring-8)や中性子施設(J-PARC MLF, JRR3)における公募研究を活用する。非晶質構造の安定性についてはあらたに結晶化プロセスのその場観察についても検討を進める必要があると考えており、高温その場観察によるX線回折測定が必要と考えている。また、本年度のMg-ACCの結果を踏まえ、ストロンチウム(Sr)などの炭酸塩を形成する他イオンについてもその効果を評価していき、当初の研究目的の進展につなげる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた低温X線回折装置について、所属機関の既設装置の利用により本年度の研究計画の目的が達成されたため導入を見送った。そのため次年度使用額が生じた。本年度得られた成果をもとにより高度化した装置仕様を検討し、次年度に導入する計画である。
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Research Products
(1 results)