2018 Fiscal Year Research-status Report
星間塵モデル物質の衝突実験から探る彗星核の形成過程
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17K14415
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
荒砂 茜 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 博士研究員 (40794681)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 星間塵 / MgSiO3 / シリケイト / 衝撃圧縮 / 非晶質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は4月1日から8月31日まで出産・育児により研究を中断した。9月の研究再開後は,前年度と同様に星間塵モデル物質の基本となる含水非晶質MgSiO3の合成とそれらについての衝撃圧縮実験,および衝撃圧縮実験後に回収した試料の解析を中心に行った.含水非晶質MgSiO3の合成は,昨年度までに確立している金属アルコキシドと硝酸マグネシウム6水和物を用いた合成手法により合成を行った.合成した試料は赤外分光測定や粉末X線回折測定により非晶質構造を有することを確認し,さらに示査熱―熱分析測定による含水量の測定で試料には8.8wt%の水が含まれていた.衝撃圧縮実験はこれまでと同様に熊本大学において,22.2 GPaまでの圧力で衝撃圧縮実験を行った.また,衝撃圧縮実験の結果を精密化するために,合成した試料について1,000℃までのTG-DTA測定を行うと共に,800℃までの温度で1時間の加熱処理も行った.衝撃圧縮実験及び加熱実験より回収した試料について,粉末X線回折測定及び赤外分光測定により解析した.X線回折測定の結果から,800℃での加熱により非晶質試料がenstatiteに結晶化することを明らかにした.他方,13.6 GPaで衝撃圧縮した試料のX線回折曲線は試料がenstatiteに結晶化したことを示した.また,衝撃圧縮後も試料に含まれる水分子がわずかに残存していたが,これは結晶化に至らなかった構造部分に残存したものと推測される.結晶化に与える衝撃圧と残留熱の影響を明らかにするためには,今後詳しい残留熱の推定を試みる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の4月から8月まで出産・育児による研究の中断があった.復帰後も育児等の問題からなかなか計画通りに研究を遂行することが難しかった.しかし,研究中断前までに合成手法等を確立しており,熊本大学との共同研究の手はずも整えていたため,実験準備や実施については再開後も比較的スムーズに行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる2019年度は,合成した含水非晶質MgSiO3の構造解析の1手段として,試料の形態観察や微結晶の形成有無の観察のために、北陸先端科学技術大学院大学のFE-SEM等の共同利用を実施する.また試料の空隙率の測定も実施予定である.含水非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験についての研究成果を取りまとめ,学術論文として発表するための原稿の作成を行う.また,2019年度は無水の非晶質MgSiO3,さらに含水非晶質Mg2SiO4の作成を行う.これにより,実際の星間塵や彗星核に合わせ,幅広い組成,状態のモデル物質を準備できることとなる.無水の非晶質MgSiO3については衝撃圧縮実験も実施する. 4年目となる2020年度は無水の非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験後の試料の解析と結果の取りまとめ,さらにMgSiO4の衝撃圧縮実験,及び実験後の試料の解析を実施する.
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Causes of Carryover |
今年度(平成30年度)は,4月1日から8月31日まで出産・育児による研究の中断を行った.計画していた国内外の学会等での成果報告を平成31年度以降へ延期したため,旅費の使用が当初予定より少なくなった.また,実験等の実施回数も研究の中断のために当初計画から少なくなった.このため実験に必要な物品等の購入も予定より少なくなった.同様の理由から論文作成等も作業が次年度にわたることとなったため,英文校正にかかる費用等も当初予定から変更が生じた.なお,上記の予定は延期された次年度(2019年度)に全て実施予定で、問題なく行える見通しである.
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