2019 Fiscal Year Research-status Report
星間塵モデル物質の衝突実験から探る彗星核の形成過程
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17K14415
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
荒砂 茜 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 特任助教 (40794681)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MgSiO3 / 衝撃圧縮 / 水 / 非晶質 / 星間塵 / 衝撃波 / シリケイト |
Outline of Annual Research Achievements |
星間塵(cosmic dust)は、ミクロンサイズの固体微粒子でありMgxFe(1-x)SiO3を含み、その結晶度は、非晶質から結晶質まで幅広いバリエーションを持つと報告されている。星間塵の衝突挙動の解明は、星間塵の形成・進化を明らかにする上で非常に重要であるが、これらの物質を実際に捕獲して地上に持ち帰り、高圧実験等を行うことには未だ多くの困難がある。以上より、本研究では星間塵のモデル物質を作成し、その衝突挙動の解明を目指す。 当該年度は前年度までに実施した水を含む非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験結果の議論を引き続き行った。また、この結果を受け、当該年度は水を含まない非晶質MgSiO3の高圧挙動の解明を試みた。本研究ではMgSiO3組成のガラスを合成し、試料とした。バルクの試料を得ることが難しかったため、合成試料を粉砕し、ペレット状に固めて衝撃圧縮用の試料とした。 試料の衝撃圧縮実験は熊本大学で実施し、圧力は15.5GPaおよび20.2GPaであった。20.2GPaで圧縮した試料の赤外吸収線スペクトルは902cm-1付近に頂点をもつブロードなバンドのみを示し、結晶性のピークは見られなかった。しかし、このブロードなバンドの頂点は,衝撃圧縮実験後に低波数側に大きくシフトしていた。これらのバンドはSi-Oの伸縮振動に起因することから、衝撃圧縮によってSi-Oの平均結合距離に変化が生じたものと考えられ、圧縮によって非晶質構造に変化があったことは間違いない。今後はX線回折測定やラマン分光なども用いて構造変化を詳細に解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに実施した水を含んだ非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験結果の議論を深めるため、水を含まない非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験を実施した。これにより本研究の目標である非晶質MgSiO3の衝撃下での構造変化が鮮明となった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は非晶質MgSiO3の衝撃圧縮実験を3ショット行ったが、うち1ショットは飛翔体衝突の際に不具合が生じており、試料カプセルが大きく破損したため試料回収には至らなかった。 今後は、追加試料での衝撃圧縮実験を実施するとともに、非晶質Mg2SiO4の合成とそれについての衝撃圧縮実験も実施する。また成果を学術論文として発表する。
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Causes of Carryover |
2019年度1-3月に出席予定であった学会、シンポジウムが新型コロナウイルスの影響で中止となった。また、衝撃圧縮実験を実施するための熊本大学への出張も同様に中止となった(共同研究者は出張したため、試料を託した)。 また、2018年度に出産・育児休暇を取得した。同年度中に研究を再開したが、2018年度は研究の進捗が遅れ気味であった。2019年度は前年度の遅れをカバーしながら、概ね予定通り計画を実施できた。2020年度は計画通りに研究を実施できると思われる。 2020年度研究費は、試料合成のために必要な試薬、ガラス器具、衝撃圧縮実験用の試料カプセルなど実験に必要な消耗品の購入にあてる。また、衝撃圧縮実験実施のための熊本大学への出張旅費、国内外の学会参加費(JpGU、日本鉱物科学会、AGUetc)も支出予定である。さらに、成果を論文にするために必要な諸経費も本研究費から支出する。
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