2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on flow structure formation of intermediate plasma using a kinetic approach
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17K14425
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (50597127)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラズマ / 速度分布関数 / プラズマデタッチメント / 中性粒子流れ / 高精度レーザー分光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,九州大学の遷移プラズマ発生装置(HYPER-II)を用いてイオンが非磁化状態にあるプラズマの中間相(遷移プラズマ)の流れの発生機構を速度空間の階層から明らかにすることを目的とした研究である.特に本年度は,荷電粒子の微視的な運動の効果によって生じるとされる電流や電場といった流れの駆動源がどのように形成されるのかに着目し,速度空間から流れの場の形成機構解明に挑戦する実験室運動論(Experimental Kinetics)を実践するためのシステム開発および初期実験を行った.高精度レーザー誘起蛍光法(LIF法)を用いた大域計測を行うために,広範囲で計測が可能な真空チャンバーを製作しHYPER-IIに導入した.これにより,沿磁力線方向だけでなく回転方向の速度成分に対する速度分布関数計測が可能になり,3次元的に遷移プラズマ領域の流れ形成を調べることが可能となった.また,真空導入型および外部設置型LIF受光系の導入・拡充やレーザー入射系の改良を行うことで,従来よりも大域的かつ効率的に速度分布関数の直接計測が可能になった.本年度は遷移プラズマ領域の流れ形成に関する初期実験を行い,興味深い結果を得ると共に,より詳細な物理機構解明のための改善点を明確にすることが出来た. 計測システム開発や遷移プラズマ領域の大域計測に関する結果の一部はアメリカ物理学会・プラズマ分科会やPlasma Conferenceなどで報告した.特に,速度分布関数の幾何学形状因子を用いた新しい巨視的流れの抽出法の提案や部分電離プラズマの流れ形成に関する中性粒子流の重要性について,2件の招待講演を行った.また,本研究は九州大学修士課程の学生(修士2年:2名,修士1年:1名)と協力して行い,実験や学会発表を通じて大学院教育にも貢献することが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は①高精度速度分布関数計測のためのシステムの開発・導入,②遷移プラズマ領域の大域的速度分布関数計測,③無衝突遷移プラズマにおけるイオン流線の乖離と電場形成の理解,④遷移プラズマ領域の流れ形成における中性粒子効果を具体的な達成目標に設定している.平成29年度は,①において計測領域が改良された真空チャンバーを導入し,LIF受光系を製作・設置することで遷移プラズマ領域の大域的な流れ計測が可能な環境整備を整えた.②-④における実験テーマについては,イオン計測用のレーザーの故障などがありイオンの速度分布関数計測が困難となったが,プローブ法を用いた遷移プラズマ計測と中性粒子の速度分布関数計測と,研究の順序を修正しながら進めることで,全体的には概ね順調に研究を進めることが出来ている. プローブ法を用いた初期実験では,遷移プラズマ領域でイオン流線が解離していることを間接的に示すイオン流れや電子密度分布のデータを取得することに成功した.特に,電位や密度構造は磁化領域の分布とは質的に異なる特徴を持っており,磁場のスケールで予想される分布よりも高密度のプラズマが磁力線から解離して維持されることを示唆する興味深い結果を得ることが出来た. 本年度は中性粒子との衝突が重要となる高圧力条件でも実験を行った.中性粒子のLIF計測から,遷移プラズマ領域では中性粒子の流れによどみ点が存在するような興味深い結果が得られた.このような流れは中性粒子ポンピング効果と中性粒子枯渇現象が関与していると考えられ,地球大気におけるプラズマの特徴的な密度・流れ形成の原理実証実験や,産業応用プラズマにおける密度やフラックスの分布制御など,様々な分野への知識の還元が可能であると期待される.イオンの速度分布関数計測と併せて流れ形成機構の統一的な理解を深めることが最終年度に向けた課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度はH29年度の初期実験を発展させ,速度分布関数の大域計測を実施し,遷移プラズマ領域の流れ構造形成を明らかにする本格的な実験を行う予定である.特に,イオンの速度分布関数計測が可能なLIFシステムを整備し,速度空間から流れそのものや流れを駆動する電場や電流の起源を明らかにする発展的な実験を計画している. 無衝突系における遷移プラズマ領域の流れ形成に関して,我々の実験では,イオンが非磁化になることによる非断熱乖離が生じているものと思われる結果が得られている.一方で,E. B. Hooperが指摘するような強いイオンの引き戻し電場は観測されておらず,流れ形成に関する詳細な物理機構が現状の課題となっている.本年度は径方向に計測領域を広げ,より磁場の不均一性の強い領域で電場形成と流れの関係を調べる予定である.また,Zeeman効果を利用してプラズマによる磁場の変形をモニターするための磁場計測システム(Lamb-dip LIF計測)も組み込む予定である. また,中性粒子の流れについては沿磁力線方向に停留点を持つような分布を持つことが示され,より詳細な分布計測が重要となる.そこで,径-軸断面でのLIF計測が可能な真空導入型受光系を導入し,プラズマー中性粒子相互作用のある場合の遷移プラズマ領域の流れについて詳細な計測を行う予定である. 本年度の研究は昨年度同様に九州大学の大学院生と協力して行い,実験や学会・研究会発表を通じて大学院教育へ貢献する.中性粒子流れの効果に関する結果をまとめ,Physics of Plasmasに投稿する予定である.また,ホームページ(http://plasma.kyushu-u.ac.jp)を通して一般社会への分かりやすい説明によりプラズマ基礎研究の重要性や面白さを発振する.
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Research Products
(8 results)