2017 Fiscal Year Research-status Report
光捕捉によるアミロイド集合体の時空間形成と蛍光解析によるそのダイナミクス解明
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17K14427
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柚山 健一 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (20786355)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光ピンセット / 光圧 / アミロイド / タンパク質 / 顕微分光 / 顕微イメージング / レーザー / 光圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、部分的に変性したタンパク質の光捕捉(光トラッピング)を通して、タンパク質アミロイド集合体を時空間的に制御して作製し、その形成過程を明らかにすることを目指す。平成29年度は、近赤外レーザーを用いた光捕捉と顕微蛍光分光・イメージングが可能な光学系の構築、ニワトリ卵白リゾチームの光捕捉実験を行った。 塩濃度、pH、加熱条件を調節することにより、部分的に変性したリゾチームの水溶液を作製した。この溶液中に波長1064 nmの連続発振レーザーを集光し、光捕捉を行った。照射開始数分後から、顕微透過像の集光点に丸いパターンが現れ、そのコントラストは照射時間と共に強くなった。この透過像の変化は、集光点においてタンパク質集合体が形成し時間と共に成長することを示している。対物レンズと顕微鏡ステージを操作することにより、ガラス基板上に集合体を付着させてその構造を観察したところ、集合体は幅1μm以下、長さ6~7μmの一本のヒモ状構造体が丸まって形成していることが明らかとなった。光捕捉の時間を短くするとヒモ状構造体の長さは短くなり、透過像観察から予想される結果とよく一致した。アミロイドセンサーであるチオフラビンT(ThT)は、このヒモ状構造体と強く相互作用し緑色の特徴的な蛍光を示した。これらの結果は、部分的に変性したリゾチームの光捕捉によって形成した集合体は、一本のアミロイド線維またはそれらが集まった束からなることを示唆している。 この一本のヒモ状構造体の形成は予想外の結果であり、今後、電子顕微鏡観察を通して詳細な形状を明らかにする。また、蛍光色素がラベルされたリゾチームを用いることにより、初期リゾチームがアミロイドへと変化する過程を蛍光スペクトルの変化として観察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、顕微計測(蛍光スペクトル測定、蛍光イメージング、蛍光寿命測定)が可能な光捕捉装置の構築と、部分的に変性したタンパク質サンプルの調製とその光捕捉挙動の観察を計画した。始めに、波長532、800、1064 nmの連続発振レーザーを倒立顕微鏡に導入し、光捕捉装置を構築した。市販の色素ドープポリスチレンナノ粒子の光捕捉挙動を調べ、レーザー光強度と捕捉の安定性などを検討した結果、1064 nmのレーザーを使用することにした。計画では数種類のタンパク質を対象とする予定であったが、最も扱いやすいニワトリ卵白リゾチームに注力して研究を進めた。部分的に変性したリゾチームを光捕捉することによりアミロイドを時空間的に作製することに成功した。長さ数百ナノメートル程度のたくさんのアミロイド線維が凝集した球状集合体が形成するとの予測に反し、長さ数マイクロメートルの一本のヒモ状構造体が丸まった集合体が形成することを見出した。ほぼ計画通り研究を遂行することが出来ており、予想外の新たな現象も見出していることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
光捕捉によるアミロイド形成のメカニズムを明らかにするためには、最終的に得られるヒモ状構造体の形状と光捕捉ダイナミクスを関連付けて議論することが必要不可欠である。前者は、目印を付けた基板上にヒモ状構造体を堆積させたサンプルを作製し、電子顕微鏡観察を行うことにより明らかにする。後者は、蛍光色素がラベルされたタンパク質を利用することにより調べる。蛍光色素がラベルされたリゾチームを含むサンプル溶液を作製し、光捕捉を行う。光捕捉中または最終的に得られた集合体を対象として蛍光スペクトルまたは蛍光寿命を測定する。スペクトルまたは蛍光寿命の動的な変化から、初期リゾチームがアミロイドへと変化する過程を議論する。これらの分光測定・形状観察を様々な溶液条件やレーザー照射条件に対して行い、ヒモ状構造体の形状と光捕捉ダイナミクスを関連付けてアミロイド形成メカニズムを考察する。
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Causes of Carryover |
リゾチームの光捕捉とその透過像観察を優先し、その他のタンパク質や蛍光色素がラベル化されたリゾチームを購入しなかったため、次年度使用額が生じた。これらの試薬の購入に使用する予定である。また、国際学会参加と国際共同研究のための旅費として費用の一部を使用予定である。
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Research Products
(10 results)