2018 Fiscal Year Research-status Report
多重極相互作用を取り込んだ近接場光励起のための第一原理分子動力学法の構築
Project/Area Number |
17K14428
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩佐 豪 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80596685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近接場光励起 / 第一原理分子動力学 / 時間依存密度汎関数理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
近接場光と分子の相互作用には双極子近似を超えた方法論の開発が必要になる。本研究では無限次までの多重極相互作用を取り込んだ手法の開発を行っている。昨年度までには、多重極ハミルトニアンと最小結合ハミルトニアンの比較検討を行い、どちらも良い一致を示す事、およびスカラーポテンシャルのみを考えれば良いことがわかった。また分子動力学計算に必要なgradientの実装とテスト計算を行った。 本年度は、対象となる分子系の構造や電子物性および四重極励起などの双極子禁制励起状態における反応経路の検討、そして近接場光による分子励起の実験が行われている分子に対して実際に近接場光励起計算を試みた。前者に関して、SERS実験が行われた金属吸着分子をモデル化した金属クラスターに吸着した分子の構造や電子状態を解析した結果は論文としてまとめた。後者の、実際の近接場光を用いた励起状態計算に関しては、数十原子を含むフタロシアニン系の分子では膨大な計算時間がかかることがわかった。本計算で用いている実時間実空間DFTの計算精度は実空間グリッドのメッシュ幅と実時間発展に必要な時間幅の二つが重要になるが、有機分子などの系で計算するために十分な計算精度を確保できるパラメータを確定した。また、実際の近接場光を用いた分子励起の実験において、どのような電場が生成しているかについても検討を進めた結果、これまで用いてきた点双極子一つが作る電場よりも、二つの点双極子の間に生成されるギャップ電場がより適切であることが分かってきた。今後は、このようなモデル電場において、ベンゼンなどの少し小さな分子における近接場光励起の分子動力学を調べて行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な分子系においても近接場光励起の計算を進めることができた。計算対象になる電場についてもその構造が分かってきた。ただし、実際の実験で用いられているような分子を対象とした計算に必要な計算精度を担保するためのパラメータもわかってきたので、今後は実電場における電子・分子動力学から近接場光特有の光化学の開拓に臨む。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ギャップ電場における分子の励起状態計算を進めていく。一方で、現在のアルゴリズムでは計算コストが非常にかかることもわかってきたので、計算コストを落とすための時間発展演算子の見直しや、ガウス基底や平面波基底を用いた電子状態計算を利用する方法についても検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
地震の影響によって予定していた学会に行かなかったため次年度使用額が生じた。これは論文発表のオープンアクセス化の費用などに充てることを予定している。
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[Journal Article] Structural and Electronic Properties, Isomerization, and NO Dissociation Reactions on Au, Ag, Cu Clusters2019
Author(s)
Yusuke KONDO, Rina TAKAHARA, Hirono MOHRI, Makito TAKAGI, Satoshi MAEDA, Takeshi IWASA, Tetsuya TAKETSUGU
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Journal Title
Journal of Computer Chemistry-Japan
Volume: 18
Pages: 64-69
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Spiral Eu(III) coordination polymers with circularly polarized luminescence2018
Author(s)
Yasuchika Hasegawa, Yui Miura, Yuichi Kitagawa, Satoshi Wada, Takayuki Nakanishi, Koji Fushimi, Tomohiro Seki, Hajime Ito, Takeshi Iwasa, Tetsuya Taketsugu, Masayuki Gon, Kazuo Tanaka, Yoshiki Chujo, Shingo Hattori, Masanobu Karasawa and Kazuyuki Ishii
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Journal Title
Chemical Communications
Volume: 54
Pages: 10695-10697
DOI
Peer Reviewed
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