2019 Fiscal Year Annual Research Report
Ab initio molecular dynamics with the multipolar interaction for near-field photoexcitation
Project/Area Number |
17K14428
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩佐 豪 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80596685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近接場光励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
近接場光と分子の相互作用を記述するためには双極子近似を超えた方法論の開発が必要になる。本研究では多重極ハミルトニアンに基づいて、分極を近似せずに用いることで無限次までの多重極相互作用を取り込むことができることを利用して、電子励起状態や分子振動励起状態や分光への応用を行ってきた。ただ多重極ハミルトニアンに基づいた手法にはやや煩雑な数値計算が必要になるため、最小結合ハミルトニアンに基づいた手法も検討した。モデル計算においては多重極ハミルトニアンの場合と良い一致を示し、さらに最小結合ハミルトニアンにおいてはスカラーポテンシャルのみを考えれば近接場励起を良く記述できることがわかった。さらに、分子動力学計算に必要なgradientの実装とテスト計算も進めている。本年度は、特に近接場光励起を利用した実際の実験を念頭においた研究を進めた。具体的には、走査型プローブ顕微鏡を利用した探針増強共鳴ラマンスペクトルと近接場光化学の実験を対象にした。前者では、分子として銅フタロシアニンを用いておりその探針増強ラマンスペクトルの選択則を理解するために実際の電場の空間分布と併せてラマンテンソルの解析を行い、論文として報告した。ラマンスペクトルのシミュレーションは計算コスト的な理由で出来なかった。また、後者の光化学に関しては、銀や銅表面に吸着したジメチルジスルフィド分子の構造や電子状態、そして近接場光励起と伝搬光励起の違いを探るためにモデル近接場を課した電子ダイナミクス計算までを行い、電場の空間構造に基づいた解析を進めている。こちらも実時間電子ダイナミクスに由来する原子核の運動を追跡するのは現時点で原理的には可能だが、計算コストの面から現実的ではないことが分かった。どちらの場合も、近接場光に励起された電子状態が原子核に及ぼす力を効率的に計算する手法を開発することでより原理解明に近づけると考えられる。
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