2017 Fiscal Year Research-status Report
デュアルコム分光を用いた高分解能ラマン分光法の開発と展開
Project/Area Number |
17K14435
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
西山 明子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員 (00770364)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デュアルコム分光 / ラマン / 高感度 / 変調分光法 / 共振器分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、デュアルコム分光法を高分解能ラマン分光に応用し、光周波数コムが持つ究極の周波数精度・分解能でのラマン分光を実現し、分子の振動励起状態の詳細な構造を明らかにすることである。本年度には、誘導ラマン型2重共鳴デュアルコム分光システムの開発に取り組むことを計画し、その準備段階として、デュアルコム分光法における測定感度の向上を目指した。まず、はしご型2重共鳴デュアルコム分光法の測定系を使って、デュアルコム分光法の高感度化の原理実証を行った。はしご型2重共鳴デュアルコム分光法は、誘導ラマン型と同様にcwレーザーを励起光として用いる。本研究ではこのcwレーザーの強度にデュアルコム分光法のデータ取得に同期した変調を与え、2重共鳴の信号のみを取り出す新しい変調分光法を提案した。この変調分光法によって、デュアルコム光源のスペクトルの揺らぎの影響を除くことができ、スペクトルのSNRの向上が確認された。このシステムは、誘導ラマン型2重共鳴デュアルコムにそのまま適用することが可能である。また、光周波数コムのモードフィルタリングによるデュアルコム分光の測定感度向上についても研究を行い、測定感度の向上を報告した。さらに本年度には研究実施場所を移し、より高い測定感度を実現するため、光周波数コムを光源とした共振器分光の研究を行った。コムを光源とした共振器分光法では、測定サンプルの外側に高フィネス共振器を構成し、コムの多数のモードを同時に共鳴させることで広い波長範囲を高感度に測定することが可能である。共振器分光法は吸収分光の測定感度を向上させるだけでなく、共振器内でのモードパワーの増大がラマン分光への応用において利点となる。新しい研究実施場所にはデュアルコム分光システムはないものの、1台のコムを用いてデュアルコムと同等の高分解能を得る、高分解能フーリエ変換分光装置の研究も並行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、デュアルコム分光法のラマン分光法への応用に際して一番の問題となると予想された測定感度の課題に取り組み、成果を上げた。新しい研究実施場所では、デュアルコム装置ではなく1台のコムを用いた分光法に取り組んでいるが、得られる分解能はデュアルコム分光法と同等であることが示されており、本研究の本質にはかかわらない。加えて研究を行った共振器分光法は、ラマン分光法への応用に大きな利点を持っており、今後の研究の発展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、共振器分光を用いた分光手法を用いて研究を進めていく予定である。さらに、振動励起状態のダイナミクスの研究を進めるために、ラマン分光に限らず赤外波長の光周波数コムを用いた赤外吸収分光の研究も並行して進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施場所と実験計画に変更が生じたため、次年度使用額が生じた。来年度以降は新しい実験計画のもと研究を進め、今年度購入できなかった物品の購入と来年度計画している物品の購入を合わせて来年度に行う。
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Research Products
(14 results)