2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14436
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西本 佳央 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 特定助教 (20756811)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 計算化学 / 量子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大規模系の非共鳴ラマンスペクトルのシミュレーションを可能にすることである。このシミュレーションにはエネルギーの三次微分を計算する必要がある。従来の計算で用いてきた数値微分では、計算を容易に行うことができる代わりに数値的誤差を大きく含んでしまう問題がある。そこで、本研究ではエネルギーの三次微分を解析的に計算することで、数値的誤差の問題を解決する。また、大規模系の応用計算を行うことも目的としている。 初年度に当たる平成29年度は、主に理論開発を行った。通常の軌道占有数は整数となっているが、本研究では軌道占有数を小数としている。当初の研究計画では、Wignerが提案した2n+1則が小数軌道占有数を用いる場合にも成り立つか分からなかったため、二次の応答方程式を解くことによりエネルギーの三次微分を計算する計画であったが、小数軌道占有数を用いる場合にも成り立つという導出と実装(プログラミング)を行うことができたため、一次の応答方程式の解のみによりエネルギーの三次微分を計算することにした。 また、プログラム面の改良として、多くの部分で原子軌道を用いた計算式を用いる、疎行列を用いることで少ないメモリで計算を高速化、さらに複数計算機を用いた並列計算を行うことができるようにした。 最終的には、金属クラスターとグラフェンナノリボンを用いてベンチマーク計算を行った。期待通り数値誤差の問題は解決され、大規模系の非共鳴ラマンスペクトルのシミュレーションが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、解析的微分を用いて非共鳴ラマンスペクトルのシミュレーションを行うことは、今年度までの研究で既に達成されている。次年度以降に行う応用計算の例として挙げた、ジグザグ型グラフェンナノリボンや金属クラスターの計算も既に行っており、研究実施計画に挙げた内容の大部分は達成されたと言える。このため、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は二次の応答方程式を解くことによる計算や、より大きな系にも適用可能な手法の開発を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初はメモリを大量に積んだ計算機を導入する予定であったが、これまでの研究で対象としてきた系では既存の計算機で問題が生じなかった。これは、プログラムを改良した結果、想定以上にメモリを削減できることが分かったためである。しかし、メモリ必要量は系のサイズの三乗に比例していくため、次年度以降さらに大規模系の計算を可能にするために、やはりメモリを大量に積んだ計算機を導入する予定である。
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