2017 Fiscal Year Research-status Report
化学進化における不斉認識と不斉転写の気相クラスター研究
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17K14441
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤原 亮正 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10580334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子認識 / キラル認識 / エナンチオマー / 構造異性体 / 分子雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子はD-糖とL-アミノ酸から構成されており、隕石や彗星によって地球外から運ばれたとする説が現在では有力となっている。本研究では、単糖や糖鎖、アミノ酸、ペプチドが水素結合した錯体を模擬星間分子雲とした紫外光解離実験を行うことで、構造異性体や立体異性体の認識と光化学反応の関係を検討した。この情報を基に質量分析感度での定量分析法を提案・検証した。 (1)光励起したプロトン化錯体では、単糖の立体異性体を識別した解離反応が観測された。本研究で作成した検量線を用いると、未知のD/L比の試料に対して1つの光解離質量スペクトルの強度比から鏡像体過剰率が求められることを示した。また、この定量分析法が六単糖の構造異性体に対しても適用できることを検証した。 (2)低温孤立状態の模擬星間分子雲では、ロイシンやイソロイシンといったアミノ酸の構造異性体も異なる反応性を示すことが明らかになった。 (3)ペプチドの分子認識能を衝突誘起解離によって検討した。トリペプチドがプロトンを用いてアミノ酸鏡像異性体を分子認識していることが明らかになった。また、スペクトルの解析から、芳香族アミノ酸をキラル認識するトリペプチドのアミノ酸配列を決定した。 (4)星間分子雲における糖鎖とアミノ酸のキラル認識の光励起実験では、マルトースとトリプトファンのエナンチオマー選択的な光化学反応によって、C-結合型糖トリプトファン類似体が一段階で生成することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量分析法(MS)は、高い感度と選択性を持ち、生体分子の測定が可能であることから幅広い分野で用いられている。一方で、同一の分子量を持つ異性体の識別は難しいという欠点がある。様々な解析法を利用したMS/MSにより、反応性の違いから構造異性体を区別することは可能だが、鏡像異性体やLeu,Ileといった構造が類似している分子は、大きな反応性の違いがないため区別することが困難である。本研究では、アミノ酸や単糖の分子認識と紫外光解離の関係を検討し、鏡像異性体と構造異性体の識別と定量分析法への応用できることを検証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
極低温孤立状態の気相クラスターを模擬星間分子雲とした紫外光解離から、アミノ酸や単糖が分子雲中で構造異性体を識別し、異なる反応性を示すことが明らかになった。昨年度は、これを利用した質量分析感度での定量分析法を提案・検証した。今後は、模擬分子雲の系統的な光解離分光を行い、分子雲中の生体関連分子の幾何構造と電子構造の関係を明らかにし、分子認識と化学進化の関係を分子科学的に検討していく。
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