2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14445
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
米田 友貴 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (60756055)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポルフィリン / ペンタフィリン / サフィリン / 生体型ピロール / 反芳香族性 / 芳香族性 / 転位反応 / 多量化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目は、本研究課題に関連して、2報の論文を発表した。これらは生体型ピロールを組み込んだオリゴピロールを利用して2種類のペンタフィリン類の合成を行い、興味深い物性を発現させることに成功したものである。まず、生体型ピロールからなるジピロールエタンとトリピランの酸縮合を利用することで、ジヒドロペンタフィリン(2.1.1.1.1)の合成に成功した。この化合物を酸化することで、24π反芳香族性を示すペンタフィリン(2.1.1.1.1)の合成に成功し、その物性を論文誌に報告した(J. Org. Chem. 2017, 82, 10737-10741)。また、同様に生体型ピロールを用いた2,2’ビピロールを用いたサフィリンの合成を行った。本化合物は結晶構造が明らかとなった初の中性状態でピロールが反転していないサフィリンであり、大きくたわんだ構造を有することが判明した。さらに、銀イオンを作用させることによって転位反応が起こり、Neo-Confused型のサフィリンの合成にも成功した。これについてもChemistry An Asian Journal 誌に投稿し、Very Important Paperとして採録、ChemistryViewsでハイライトされた (Chem. Asian. J. 2018, 13, 934-938)。 さらに、現在進行している研究テーマについて日本化学会、日本薬学会、基礎有機化学会、International Symposium on Novel Aromatic Compoundsにおいて合計7件の学会発表を行っている。本研究に関する2報の論文発表を行ったのみならず新たな研究展開も見られており、極めて順調に研究が展開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生体型ピロールを組み込んだペンタフィリン類について反芳香族性の発現に成功し、新しいビニレン架橋に由来する反芳香族性の発現に成功した。またサフィリンの大きくひずんだ構造ながら発現する芳香族性、その銀錯化による転位反応について論文発表をした。これらの化合物の芳香族性について興味深い成果を得ている。 ジビニルポルフィリン多量化に関しては、生体型ピロールを用いたジビニルポルフィリンの効率的な大量合成に成功した。この化合物は、プロトポルフィリンIIIのカルボキシル基が存在しない構造であり、副反応を抑制できる前駆体となる。これを用いて新しいジビニレン架橋ポルフィリン二量体の合成に取り組んでいる。オレフィンメタセシスを用いる方法については予想に反して反応が効率よく進行しなかったものの、Heck反応を用いることによってビニレン部位を効率的に反応させられることを明らかにした。この反応を利用して、単なる多量化にとどまらないビニレン部位の多様な修飾反応についても検討を行った。得られる化合物群はビニレン架橋部位によってポルフィリンユニットと効率よく相互作用していることも明らかとなった。 ピロールの修飾反応についての検討についても進行中であり、新たなビルディングブロックとなりうる生体型ピロールの修飾法についての検討を行っている。ヨウ素化とベンジル基の還元を組み合わせることで、2つのホルミル基を有するピロールの合成および、McMarry反応を用いた本化合物の多量化について検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
生体型ピロールを用いた拡張ポルフィリン類の合成については、より大きな環状構造の固定とその反芳香族性、芳香族性の発現についても検討する。特に、あらかじめ構造固定をしたビピロールの合成法について、ピロール合成の手法からの改良を行い目的の物性を発現させられるようにする。さらにビルディングブロックとなる対面型ピロール二量体の合成およびさらなる三次元芳香族性発現のための修飾手法の開発について進めてゆく。 ジビニルポルフィリンの多量化についてはその合成条件について検討を行う。現段階ではHeck反応によって効率よくビニルポルフィリンを修飾できることが判明しているため、ジハロゲン置換型ポルフィリンを既報に基づいて合成し、これと反応させることで、ビニレン架橋型ポルフィリン二量体の合成を達成する。今後Protoporphyrin IIIなどの天然型ポルフィリンに対してもHeck反応を行うことで、その修飾やさらなる多量化に関する研究を進めてゆく。 これらに加えて生体型ピロールとピリジン環やメゾ位にヘテロ原子を組み込んだ拡張ポルフィリン類が合成できる可能性が強く示唆されおり、これらの研究も多角的に進めつつ、芳香族性の本質に迫るための研究を進めてゆく。
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