2017 Fiscal Year Research-status Report
高次分子マシンを志向したヘテロ[3]ロタキサンの合成と位置変換シャトリングの実現
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17K14446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正井 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (70793149)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超分子 / ロタキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ロタキサンのシャトリングに基づく分子マシンの高次機能化を志向して、複数環状分子が導入された高次ロタキサン構造の新規合成法の開拓、並びに複数環状分子間の位置変換シャトリングを実現することである。複数環状分子の有無やその位置・数を精密に制御したロタキサンや、異なる環状分子が導入されたヘテロロタキサンの合成を目指す。さらに、巨大環状分子が導入されたヘテロロタキサンは、一方の環状分子が他方の環状分子を貫通するために、従来困難とされてきた大環状分子が貫通したロタキサンの実現が期待される。これを達成するための本研究の特色として、大環状分子が貫通したロタキサンという、本来エントロピー的に不利な構造を二重らせん構造の導入によって解決する点にある。この戦略は従来のロタキサン合成法と両立性が高く、既存ユニットとの組み合わせによって多様な超分子構造へと展開が可能である。即ち本研究では、既存のロタキサン合成法と自己組織化に基づく二重らせん構造を組み合わせた環状分子を合成する。らせん構造によって環状分子は従来のサイズまで形式的に縮小され、ロタキサン合成に適した立体を形成する。らせんを解くことによって構築される大員環ロタキサンは、2つ目の環を貫通し位置変換が可能となる。シャトリングにおける環サイズ依存性を評価するとともに、カテナンなどの他の超分子構造へと応用することで、本手法の汎用性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヘテロな超分子構造を有する高次ロタキサンの合成と、高次シャトリング実現に向けての大環状分子の合成検討を行った。まず、ロタキサン構造を形成する環状分子の位置と数を精密に制御したヘテロ[n]ロタキサンの精密合成法を確立した。これは逐次的な反応において反応溶媒系を制御することで、軸分子に対する環状分子の数や位置をコントロールできる新規合成法であり、最終的には[11]ロタキサンという超巨大超分子の精密合成を成功するに至った。本研究は学術誌に掲載が決定するとともにそのBack coverに採用された。 続けて、金属錯体を用いたロタキサン合成法を開発するために、その前駆体として二重らせん骨格のモチーフが導入された分子の合成を試みた。Lehnらによって報告されたビス(2,2’-ビピリジン)銅(I)錯体をらせん骨格として採用した。2,2’-ビピリジンの数を変化させることで環サイズを調節する目的で、2,2’-ビピリジンを1つ有する前駆体の合成に成功した。 またこの研究を行う中で偶然にも、単一のアミノ酸の縮合反応をある条件で行ったところ巨大環状分子を形成することが明らかとなった。この結果は巨大環状分子を用いる本研究と有機的に作用して、新しい合成アプローチの開拓が期待される。 この様に、本研究は当初の研究計画を着実に遂行し成果をあげており、一部においては 研究計画を超える成果も見受けられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ビス(2,2'-ビピリジン)銅(I)錯体を導入した大環状分子を合成し、環サイズに依存しない大環状分子の効率的合成法を確立する。閉環反応としては官能基許容性に優れたオレフィンメタセシス反応を利用する。銅錯体に基づくらせん形性によって末端反応点が近接するため、環サイズに依らず大環状分子が高収率で構築される。骨格中の2,2'-ビピリジンの数をオリゴマーから高分子領域まで変化させて、反応効率の環サイズ依存性を明らかにする。環状構造の形成はサイズ排除クロマトグラフィーや拡散・粘弾性測定によって評価する。環状分子は銅イオンの添加に基づく巨大構造変化が期待され、これがマクロ物性に与える影響も併せて評価する。 加えて、らせん構造への自己組織化と従来のロタキサン・カテナンテンプレート合成法を融合することで大環状分子をロタキサンやカテナンなどの超分子合成へと応用し、本分子設計の妥当性を評価する。
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Research Products
(10 results)