2017 Fiscal Year Research-status Report
反芳香族化合物の対面型多量体の合成とその特異的芳香族性の解明
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17K14447
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 健一 大阪大学, 理学研究科, 講師 (40468145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反芳香族性 / ポルフィリノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
・前駆体である芳香族ジオキサポルフィリンを文献に従い合成を試みたが、文献には記載されていなかったジオキサポルフィリンの不安定性が明らかになり安定に単離することができなかった。そこでジチアポルフィリンに標的化合物を変え、種々の誘導体の合成と還元を試みた。その結果、ベータ位にシアノ基を4個有するジチアポルフィリンが、温和な条件で容易に還元され目的のイソフロリンを与えることを明らかにした。またこのイソフロリンが弱い反芳香族性を示すことをNMRおよびDFT計算から明らかにした。 ・参照化合物となるポルフィリンダブルデッカー錯体およびトリプルデッカー錯体の合成および構造に関して、未だ不明なところが多く残されていたためその調査を行った。その結果、ダブルデッカー錯体において安定にとりうるすべての化学状態の構造を明らかにした。二つのポルフィリン間の回転角が変化すること、その変化がポルフィリンの周辺置換基に依存することを明らかにした。さらに、これまで合成が困難であった重希土類トリプルデッカー錯体の合成とその構造解析に初めて成功した。これらは、目的の反芳香族化合物のダブルデッカー錯体を構築するうえで重要な知見となる。 ・もう一つの参照化合物であるSNAr 反応を用いたポルフィリン対面型二量体に関して、さらなる合成条件の検討および構造解析を行った。その結果、既報の類似化合物に比べて短工程、かつ高収率で標的化合物を得る条件を見出した。また、各種構造解析の結果、得られた化合物は溶液固体共に強固に対面型構造を維持していることを明らかにした。すなわちその性質を決定するポルフィリン間の面間距離を、自在に制御できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画は、既知化合物であるジオキサポルフィリンを合成し速やかに合成し、その還元による反芳香族化と対面型集積体の構築の条件検討に十分な時間を充てる予定であった。しかしながら、前駆体である芳香族ジオキサポルフィリンを文献に従い合成を試みたが、文献には記載されていなかったジオキサポルフィリンの不安定性が明らかになり安定に単離することができなかった。数種の類縁体の合成も試みたが同様に不安定であった。 以上の予期していなかった理由により、標的化合物の変更が必要になった。反芳香族イソフロリンを得ることには成功したが、対面型集積体の構築の検討が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
反芳香族イソフロリンを得ることができたため、対面型2量体および3量体の構築を検討しその芳香族性を明らかにする。昨年度若干の進捗の遅れが生じたため、当初の予定であった面間距離の評価、および集積数の偶奇効果のうち少なくともどちらか一方について詳細に調査を行い明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行していたが、研究の進捗に遅れが生じたことと既存の試薬、機器を有効に利用することができたため未使用額が生じた。遅れは生じたものの、問題は克服できたことから、平成30年度は、研究協力者を増員し、前年度未達成だった計画も含めて研究を実施する予定である。
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