2017 Fiscal Year Research-status Report
パーフルオロアルキル基を有するC3対称低分子量ゲル化剤の創製と機能開拓
Project/Area Number |
17K14452
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
島崎 俊明 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10452476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パーフルオロアルキル基 / 低分子量ゲル化剤 / 星型有機分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書に記載の通り,本計画ではC3対称性を有するパーフルオロアルキル基ベースゲル化剤を設計・合成し,その物性を通常のアルキルおよびコレステリル基が置換したものと比較検討することを最初の目的としている。 計画の通り,初めに目的とする1,3,5-置換ベンゼン,パラ置換ベンゼン,メタ置換ベンゼンの合成を,通常のエステル化反応の条件で試みた。その結果,パラ置換体とメタ置換体はそれぞれ37%と50%の収率で得られた。一方,1,3,5-置換体に関しては,通常のエステル化反応の条件では反応がほぼ進行しないことが分かった。そこで原料と反応試薬に加えてヘキサフルオロベンゼンを少量添加して反応を行うと,35%の収率で目的物を得ることができた。 合成した三種類の化合物を用いてゲル化試験を行った。またその結果を以前論文報告したコレステリル同族体のもの(Tetrahedron, 2016, 72, 1517-1523)と比較した。試験の結果,1,3,5-置換体はフッ素化溶媒に対して非常に良好なゲル化能を示すことが明らかとなった。すなわち,1,2-・1,3-・1,4-ジフルオロベンゼン,ノナフルオロブチルヨージド,ノナフルオロ-1-ペンタノール,ヘプタコサフルオロトリブチルアミンなどの高度にフッ素化された溶媒を選択的にゲル化する事が分かった。また生成するゲルは非常に強固であり,室温で2ヶ月以上放置してもゲル状態が崩壊しない事も併せて明らかとなった。これらのキセロゲルに対してXRDを測定し,分子の積層に関する知見を得た。その結果,当初の予想の通り,パーフルオロアルキル基が積層したであろうピークパターンがそれぞれのキセロゲルにおいて観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前我々のグループが発表したC3対称性を有する低分子量ゲル化剤の論文(Tetrahedron, 2016, 72, 1517-1523)の「結果と考察」の章は,①合成と解析,②構造的特徴の解明,③ゲル化特性の調査,④XRD測定,⑤モルフォロジー調査の5章から構成している。一方,このパーフルオロアルキル基を有するC3対称性ゲル化剤の合成についての現在の進捗としては,⑤以外のすべての部分が完了しており,現在モルフォロジー調査のためのFE-SEMの予約待ち状態である。また全ての化合物の機器分析的解析も終了しており,論文も8割程度執筆が完了している。これを測定した後,速やかに論文として結果をまとめて投稿予定である。またそれと並行して学会発表による結果の公表も予定している。 以上により,当初計画の通り初年度に行う予定としていたC3対称性を有するパーフルオロアルキル基ベースゲル化剤を設計・合成,および,ゲル化試験に関してはほぼ完了しており,当初の計画からのズレは殆ど無いと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず ①中心のパイ部位をベンゼンから1,3,5-トリフェニルベンゼンに拡張した同族体を設計合成し,パイ-パイ相互作用を増強する事でゲル化にどのような影響が出るかを検討する予定としている。また,ナフタレンを中心骨格にしたものも同時に合成中である。これらを合成し,同様にゲル化試験およびゲルの形態を観察することにより,パイ拡張がゲル化に及ぼす影響について調査する。②次に,分子内にコレステリル基およびパーフルオロアルキル基を同時にもつゲル化剤の合成を行う。これにより,パーフルオロアルキル基の凝集力に加えてファンデルワールス相互作用の効果の観測を目指す。仮にファンデルワールス相互作用がパーフルオロアルキル基の凝集力よりも弱い場合,ゲル化能の低下およびゲルの強度の低下が予想される。これらを定量的に見積もる予定としている。③次に,カルバゾールなどの強い電子ドナー性を有する化合物を高度にパーフルオロアルキル化する事で,ゲル化能の発現および電子特製の反転が起こるかを観測する。すなわち,高度にフルオロ化されたアルキル基を電子ドナー性分子に導入する事で,誘起効果によって共鳴効果に依らずその分子の電子特製を変調させることができるかどうかを併せて調査する。これが可能となれば,化合物の電子ドナー・アクセプター性を分子骨格を大きく変えることなく調節できるため,有機ゲル分野のみならず機能性有機材料の分野にも大きく貢献することができる。具体的には,カルバゾールをパイ骨格として用い,カルバゾールの窒素上,および3,6位をパーフルオロアルキル化する事を計画している。事前のDFT計算の結果では,これによって当初の予想通り化合物のLUMOを大きく低下する事が示唆されているため,電子受容性を有するカルバゾールを合成可能である。
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Causes of Carryover |
目的物を合成するための原料,溶媒,試薬などの当初見積もっていた価格から大きく割引をして貰ったために差額が生じた。またある程度の原料と試薬を事前に我々の研究室で所有しており,それらを使用することによって目的物の大半を合成する事ができたことも理由として挙げられる。さらに,当初,調査目的で参加を予定していた学会を大学予算で賄えたことも大きな理由である。 今後の使用計画として,ゲル化試験のためのフルオロ化された溶媒購入,原料であるナフタレン誘導体,カルバゾール誘導体,トリフェニルベンゼン誘導体を購入予定である。また,9月の学会に参加予定であるため,その費用を科研費から捻出する予定である。
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