2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of molecular crystalline electrolytes for all-solid magnesium sulfur batteries
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17K14460
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
守谷 誠 静岡大学, 理学部, 講師 (70452208)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン伝導 / 分子結晶 / マグネシウム / 固体電解質 / 電池 / 固体イオニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユビキタス元素を構成要素とするマグネシウム硫黄電池の全固体化を目的として、我々が以前から着目していたイオン伝導パスを有する超分子結晶を固体電解質材料として展開することを試みた。本年度はマグネシウム電池の動作が確認されている電解液の構成要素を参考に、マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドとトリグライムからなる分子結晶を合成し、その構造解析、相転移挙動を評価した。我々はマグネシウムとトリグライムがモル比1:2で反応した分子結晶をすでに合成していたが、今回、このモル比を1:1とすることにより新規超分子結晶を得ることに成功した。単結晶X線構造回折測定より、得られた分子結晶ではマグネシウムイオンが7配位構造をとっていることを確認した。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオンはマグネシウムイオンのアキシャル位に配位し、トリグライムは4座配位子となっていることを明らかにした。また、新たに有機基質の代わりにイオン液体を構成要素としてマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド塩を組み合わせた分子結晶の合成にも取り組んだ。その結果、[N(CH3)2(CH2CH3)2][N(SO2CF3)2]を出発原料に用いることにより、新規分子結晶[N(CH3)2(CH2CH3)2][Mg{N(SO2CF3)2}3]を得るとともに、その結晶構造解析を行った。また、イオン伝導体の評価を行うことにより、得られた試料は室温付近で10-6 S cm-1程度の伝導性を示すことも確認した。無機系マグネシウムイオン伝導体では、多くの場合イオン伝導性の発現に数百度の加熱を要するのに対し、本研究で得られた試料は室温でイオン伝導性を示していることから、イオン伝導が困難とされている多価イオン伝導体の開発において、有機物の活用が有効であることを示唆する結果が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「リチウムイオン伝導性分子結晶の開発」に関する検討で得られた知見を基礎に、分子結晶のイオン伝導性向上には、構成要素の立体的サイズが小さいことが望ましいことを見出している。これを参考に、{N(SO2CF3)2}-を持つマグネシウム塩と有機分子との自己集積化を利用した新規分子結晶の合成を検討した。すでにマグネシウム電池の動作が確認されている電解液の構成要素を参考に、トリグライムとMg{N(SO2CF3)2}2をモル比1:1で反応させることにより、トリグライムと{N(SO2CF3)2}-の両者がマグネシウム中心に配位した新規分子結晶[Mg(triglyme){N(SO2CF3)2}2]を得た。さらにその結晶構造を明らかにすることに成功した。この結果は電解液中でのMg{N(SO2CF3)2}2の振る舞いについて新たな知見を与える結果でもある。また、イオン液体を構成要素とした超分子結晶の合成にも着手し、Mg{N(SO2CF3)2}2と同種のアニオンを持つイオン液体[N(CH3)2(CH2CH3)2][N(SO2CF3)2]とMg{N(SO2CF3)2}2との反応から、{N(SO2CF3)2}2アニオンがマグネシウムイオンを架橋したアニオン性一次元鎖構造を有する新規結晶[N(CH3)2(CH2CH3)2][Mg{N(SO2CF3)2}3]を得た。この結晶は室温下で1x10-6 S cm-1程度のイオン伝導性を示すことも明らかにした。これはイオン伝導性の発現に加熱を要する既報の無機系マグネシウムイオン伝導体に比べて著しく高いものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、リチウムイオン伝導性分子結晶の合成において、高い解離度と多点配位能を併せ持つ{N(SO2CF3)2}アニオンの活用が有効であることを参考に、このアニオンを有するマグネシウム塩を出発原料とした分子結晶の合成を検討してきた。ただし、得られた含マグネシウム分子結晶のイオン伝導性は、同様の有機基質とアニオンを持つリチウムイオン伝導性分子結晶に比べて低い。この要因として、1価のリチウムイオンに比べて2価のマグネシウムイオンでは対アニオンとの相互作用が大きいことが予想される。特に、{N(SO2CF3)2}アニオンは多点配位能を持つため、キレート効果によってマグネシウムイオンとの相互作用が大きくなり、イオン伝導が不利になっている可能性が考えられる。分子結晶を電解質として展開するには、伝導性の向上が必須である。そのため、今後は分子結晶の構成要素の中でも、特に対アニオンの選択肢を拡げることによりこの課題に取り組んでいく。すでにこのような観点から、固体電解質としての報告例もあるボロハイドライドに着目し、新規分子結晶の合成に着手している。ボロハイドライドはケトンやニトリルに対し還元剤として働く。そのため、このような還元を受けない官能基で構成される有機基質を適切に選択し、ボロハイドライドを対アニオンとするマグネシウムイオン伝導性分子結晶の合成を重点的に検討する。また、ボロハイドライド以外の対アニオンを持つマグネシウム塩を出発原料とした分子結晶電解質の開発も並行して検討する。イオン伝導性の高い試料が得られ次第、電位窓や輸率の測定、電池の作成を検討する。
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Research Products
(12 results)