2017 Fiscal Year Research-status Report
反応活性なゲルミレンを反応場とする分子変換反応の開発
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17K14464
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
猪股 航也 学習院大学, 理学部, 助教 (40756813)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲルミレン / メタロゲルミレン / 触媒反応 / 還元的脱離 / 二座配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)カチオン性メタロゲルミレンのさらなる反応性を探索し、一当量のジアゾ酢酸エチルと反応させることにより脱窒素反応を伴いゲルミルケテンが生成することを明らかにした。これは穏和な条件下でのゲルミルケテンの生成法として期待できる。また、カチオン性メタロゲルミレンはヒドロシランと可逆的な活性化を行うことを報告していたが、シランの嵩高さを大きくすることにより還元的脱離脱離の速度が上昇することが明らかになった。これはX線結晶構造解析によってシランの置換基とゲルミレンの置換基との立体反発によるものであることを明らかにした。 (2)カチオン性メタロゲルミレンの触媒とするアルデヒドやケトンのヒドロボリル化反応の検討を行ったところ、室温下でアルデヒドおよびケトンのヒドロボリル化を確認した。これはこれまでに報告されているゲルミレンを用いたヒドロボリル化反応とは別の触媒サイクルで反応が進行していると考えられる。 (3)N-P二座配位子を持つゲルミレンの合成に取り組んだ。リチウムアミドとジクロロゲルミレンとを反応させることによりN-P二座配位子を持つクロロゲルミレンの合成に成功した。また、この配位子はP上に容易にOやSを導入することができ、N-S二座配位子を持つクロロゲルミレンの合成にも成功した。この化合物のX線結晶構造解析によりGe-S結合距離がこれまでに報告されたものの中で一番長く、溶液中でSの配位が外れ、塩基が配位していないゲルミレンが系中で発生する可能性がある。 (4)P上にOを導入したN-O二座配位子は溶解性が悪く、上記の方法ではクロロゲルミレンの合成はできなかった。そこで、N-O二座配位子にジクロロゲルミレンとボレートとを反応させることによりカチオン性のN-O二座配位子を持つクロロゲルミレンの合成に成功した。同様の方法でN-PおよびN-P二座配位子を持つクロロゲルミレンも単離に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カチオン性メタロゲルミレンはゲルミレンで初めての可逆的なSi-HおよびB-H結合の活性化に成功している。そこで本研究ではカチオン性メタロゲルミレンの触媒への応用として様々な基質との反応を行なってきた。嵩高さのことなるヒドロシランとの反応において還元的脱離の速度が異なるという重要な知見を得ることができた。さらにカチオン性メタロゲルミレンを触媒としていくつかのアルデヒドやケトンでヒドロボリル化が進行するということが分かった。また、30年度に予定していた新しいゲルミレン触媒の開発に着手でき、触媒の前駆体であるクロロゲルミレンの合成に成功した。その過程で配位の異なるゲルミレンを5種類作り分けることができた。したがって、現時点において本研究はおおむね順調に発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当初の計画通り、カチオン性メタロゲルミレンのヒドロボリル化への応用を視野に入れた触媒反応の検討を引き続き行う。また、カチオン性メタロゲルミレンを用いた新たな触媒反応の開発に取り組む。さらに前年度に合成したクロロゲルミレンを原料とし、二座配位子安定化ヒドロゲルミレンの合成及び基質との反応を行なっていく予定である。
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Causes of Carryover |
実験手法の改善によりYoungコック付きガラス器具や好き付きガラス器具の支出が大幅に抑えられた。その分を今年度は英文校正や実験助手を雇用に使用する。それによって研究と論文発表の大幅な加速に繋げられると考えている。
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