2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14475
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
武藤 克也 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10760605)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 逆フォトクロミズム / 可視光 / 非線形応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の光応答分子では、励起光として紫外光を用いるために特に生体系への応用を考える上で大きな問題となり、理想的には700 nm以降の可視光や近赤外光を用いることが求められている。一方で、着色体が最も安定であり、可視光照射により色が消失する「逆フォトクロミズム」は可視光照射により分子の光異性化が進行するため、分子スイッチの応用展開を考える上で魅力的な現象である。また、日常生活に使われるインコヒーレント連続(CW)可視光を用いて、弱光下では応答せず、ある閾値以上の光強度下でのみ応答する可視光非線形応答型フォトクロミック分子の創製は、背景光に影響されない高選択的光スイッチ分子の実現という観点からも重要な課題である。本年度では、一分子内に正フォトクロミズムを示すユニットと逆フォトクロミズムを示すユニットを組み込んだバイフォトクロミック分子を開発し、光強度の異なる可視光を照射することで、着色状態の色調を変えることに成功した。照射光強度が弱い時には逆フォトクロミズムによる消色反応が支配的に起こり、溶液の色調は橙色から黄色に変化する。一方で、照射光強度が強い時には逆フォトクロミックユニットの可視光増感効果により正フォトクロミズムの着色反応が支配的に進行し、溶液の色調は深緑色に変化する。この特異的な励起光強度依存性について速度論解析を行い、励起光強度依存性が現れる理由を詳細に説明することに成功した。このような非線形的な着色現象は、パルス光に限らずCW光でも誘起することができ、更なる可視光応答材料の開発が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、可視光照射により駆動する逆フォトクロミック分子をさらに発展させ、励起光強度に応じて着色状態の変化する非線形応答逆フォトクロミック分子を世界に先駆けて開発することに成功した。このような分子の開発により、本申請課題である逆フォトクロミック分子の高機能化のみならず、ホログラム画像の実時間光制御やキラルネマチック液晶相転移、高速蛍光スイッチングにおいても安価な励起光を用いてより複雑な制御が可能になることが期待できる。また、上記の分子以外にも、逆フォトクロミック分子を2つ結合させることにより、非線形的に色が消失する新たな逆フォトクロミック分子の開発にも成功しており、現在詳細なフォトクロミック特性の検討を行っている。これらの分子は当初の予想を遥かに超えた興味深い現象、特性を示すことが明らかとなり、これまでの逆フォトクロミズムの概念を覆す研究になると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に開発した新たな逆フォトクロミック分子の赤色光や近赤外光に対する感度を向上させるとともに、これらの分子を用いた応用展開を試みる。具体的には、まずは研究計画通り、量子化学計算をもとに、電子状態やフォトクロミック反応の遷移状態に関する知見を得ることで新奇分子を設計し、光異性化反応の感度の向上および、更なる熱戻り速度の向上を目指す。開発した分子のフォトクロミック特性については、レーザーフラッシュフォトリシス測定、時間分解赤外吸収スペクトル測定、CDスペクトル測定等の分光測定手法を用いて評価を行う。 分子の開発を推進した後、ホログラム画像の実時間光制御やキラルネマチック液晶相転移、高速蛍光スイッチングなどへの応用展開を試み、逆フォトクロミック分子の光スイッチとしての有用性を示す。
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Causes of Carryover |
国際会議に出席する予定が1つキャンセルされたため、約27万円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額分は、有機分子合成に必要な試薬等の物品費として使用予定である。
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Research Products
(26 results)