2018 Fiscal Year Research-status Report
Developments and Applications of Alkyne Carbosilylation Using Trifluoromethylsilane
Project/Area Number |
17K14479
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
杉石 露佳 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30636220)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | カルボシリル化 / トリフルオロメチルシラン / 付加反応 / 遷移金属触媒 / アルキン / トリフルオロメチルアルケン |
Outline of Annual Research Achievements |
アルキンに対してトリフルオロメチルトリメチルシランのカルボシリル化を実現するために、フッ化物を使わずに炭素-ケイ素結合活性化剤となる遷移金属を検討する必要があると考える。一般的に、トリフルオロメチルトリメチルシランによるトリフルオロメチル化は、トリフルオロメチルトリメチルシランからトリフルオロメチルアニオン種を生成させるためにフッ化セシウムやフッ化カリウムなどのフッ化物共存下で行う。フッ化物イオンはトリフルオロメチルトリメチルシランのシリル基と結合形成し、炭素-ケイ素結合が活性化され、系中でトリフルオロメチルアニオン種が生成する。フッ化物を用いたトリフルオロメチル化においては、形成されるフッ素-ケイ素結合が強いため、シリル基は脱離基として働く。一方、当該研究にてトリフルオロメチルトリメチルシランのシリル基が炭素-炭素多重結合に付加するためには、フッ化物以外の活性化剤を使う工夫が必要であると考える。しかし、シリル基を脱離させずにトリフルオロメチルトリメチルシランの炭素-ケイ素結合を活性化する金属を見つける作業は挑戦的であった。そこで、まず、求核的トリフルオロメチル化剤と不飽和有機化合物との反応によるトリフルオロメチルアルケンの合成を優先した。目的化合物の性質を調査すべく、ハロゲン化アルケンのトリフルオロメチル化について、銅、配位子、フッ化セシウムを検討することにより、触媒化に成功した。また、反応性の高いアルキンを基質とする工夫をした。特に反応性が高いと考えられる環状アルキンに対して、トリフルオロメチル化およびトリメチルシリル化のそれぞれの反応機構を調べることにより、研究目的であるカルボシリル化の最適条件を見出す戦略を立てている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、目的化合物であるトリフルオロメチルアルケンを、ハロゲン化アルケンのトリフルオロメチル化によって得たことで、予備調査が進んだ。また、銅-二座配位子の触媒系によりトリフルオロメチルアニオン種が安定化され、トリフルオロメチルアルケンが得られることも明らかにした。 しかしながら、触媒作用が期待される一般的な金属塩や配位子が、目的の合成反応であるトリフルオロメチルシランを用いたアルキンのカルボシリル化にて効果を示さないことから、用いるアルキンの基質選択も重要であることが判明した。そこで、環状アルキンを用いることにより、カルボシリル化の反応性を高める工夫を考案した。以前に、アライン中間体をトリフルオロメチルアニオン種と反応させることで、トリフルオロメチル化を進行させられることが報告されている。一方で、トリフルオロメチルシランをシリル化剤として利用した芳香族求核置換反応も報告例があり、これを当実験室にても再現することができた。つまり、アラインとの反応において、トリフルオロメチルシランがトリフルオロメチル化剤として働くと同時にシリル化剤として働く可能性があると考えられる。現在、アライン中間体の発生法やフッ化物の当量、試薬の添加方法に着眼し、環状アルキンのカルボシリル化が進行する反応条件を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
シリル基を脱離させずにトリフルオロメチルシランの炭素-ケイ素結合を活性化するための触媒として、銅、ロジウム、パラジウムなどの遷移金属の検討を続ける。さらに、反応条件や分子設計についても見直す。すなわち、反応性の高いトリフルオロメチルシランや環状アルキンを基質に用いる。トリフルオロメチルシランの反応性向上のためには、シリル基をトリメチルシリル基であるものからトリエチルシリル基であるものに変更するなど、シリル基の電子供与性を高める対策が考えられる。また、環状アルキンとしては、アラインを系中で効率よく発生させ、これをトリフルオロメチルシランと反応させてカルボシリル化を進行させる狙いである。そして、本目的反応に適した条件や試薬を添加する方法を見出す。トリフルオロメチル化およびシリル化のそれぞれの反応機構を調査・考察することにより、研究目的であるカルボシリル化の最適条件を見出す戦略を立てている。当初は、フッ化物の添加によってトリフルオロメチルシランが、アルキンをシリル化する効力を失うと推測していた。しかし、フッ化物共存下においてトリフルオロメチルシランがシリル化剤として用いられる反応も報告されている。そこで、今後は、アライン中間体を発生させる条件下にてトリフルオロメチルシランがトリフルオロメチル基の求核性を失わずにカルボシリル化を達成できるように検討する方針である。 また、トリフルオロメチルアルケンの合成を主旨とした予備調査も継続的に行う。
|
Causes of Carryover |
予備実験については順調に進めることができたが、本題目については、当初、反応が進行すると推定された試薬のみではなく、さらに適用範囲を広げて調べる方が充分に研究目的を果たせると判断した。そこで、新しい試薬や装置を用意してより多くの実験結果を得るために研究期間を延長させることにした。
|
Research Products
(6 results)