2017 Fiscal Year Research-status Report
合金クラスター触媒による直接的C-H官能基化反応の開発
Project/Area Number |
17K14482
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
高橋 正樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60754330)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属クラスター / 酸化反応 / 結合の活性化 / 空気酸化 / 合金 / デンドリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は合金クラスターを触媒として用い有機化合物のC-H結合を活性化し官能基化することで新たな反応を生み出すことである。一年目の成果としては、本課題の代表者が筆頭著者として、Science紙の姉妹紙であるScience Advancesに論文を掲載することができた。この研究ではデンドリマーという樹上構造を持つ分子を金属クラスターのテンプレートとして用い合金クラスターを合成している。金属クラスターの前駆体である金属錯体をデンドリマーに配位させることでデンドリマーのイミンの窒素数に対応する錯体が配位したデンドリマー錯体を合成でき、このデンドリマー錯体を還元することでサイズの制御された金属クラスターを作ることができる。この手法を用いて金と白金と銅の三種類の金属からなる約1 nmの大きさの合金クラスターを世界で初めて合成することに成功した。この合金クラスターを有害な有機溶媒を使用せず空気中の酸素分子を酸化剤として用いたクリーンな条件での有機分子の酸化反応触媒として用いた。その結果、不活性な炭化水素化合物のC-H結合の酸化反応において市販触媒や単一の金属からなるクラスターと比べて遥かに高い触媒活性を示すことを見出した。合金クラスターの同定についてはSTEMのEDSにより単一のクラスター粒子に三種類の金属が存在することを確認し、さらにXAFSの測定によりクラスター内で銅原子と他の金属原子との結合があることが示唆された。また、様々な実験を行い反応メカニズムの解明を試みたところ、銅と他の金属との合金化により炭化水素の酸化反応の中間体である過酸化物からケトンへの変換反応が速くなっており、これは主に銅と他の金属間の界面で起きていることを突きとめた。この研究実績は新たな物質の合成法の確立とその高い機能を明らかにし、材料科学や触媒化学の分野に大きな波及効果があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、既に合金クラスターを用いたC-H結合の官能基化反応に関して世界的に評価の高い学術誌への掲載がされており、概ね順調に研究が進展しているといえる。今後、研究実績の概要で挙げたC-H結合の空気酸化反応をより難易度の高い、位置選択的な反応へと展開すべく現在検討を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で銅と貴金属の界面で酸化反応の触媒機能が大きく向上することがわかった。今後の研究の推進方策としては、銅と貴金属のみならず他の金属との合金化など、金属クラスターのバリエーションを増やしていき、より一般的な合金クラスターの機能を調べる。その検討と同時に有機反応としてはより難易度の高い変換反応へと展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入を計画していた実験機器の納期が予想以上に長くなってしまい次年度に購入するように変更したため。
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Research Products
(4 results)