2018 Fiscal Year Research-status Report
PNPピンサー型ホスファアルケン錯体をルイス酸としたFLP型酸・塩基触媒の開発
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17K14485
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹内 勝彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (90724097)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホスファアルケン / 遷移金属錯体 / 白金錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
嵩高い置換基を持つルイス酸とルイス塩基を組み合わせたフラストレイティドルイスペア(FLP)は、水素等の小分子の不均等開裂を可能とし、触媒としての応用も進んでいる。このFLPの概念を遷移金属錯体に取り入れ、遷移金属特有の挿入反応と組み合わせた触媒反応などが期待されているが、挿入活性の高い後期遷移金属はルイス酸性が低いため、これをルイス酸としたFLPの報告例は存在しなかった。そこで本研究では、中心金属のルイス酸性の向上が期待できるPNPピンサー型ホスファアルケン配位子(ビスホスファエテニルピリジン・BPEP)を有する配位不飽和なカチオン性錯体を合成し、これを用いたFLPの構築と触媒反応への応用を目的とした。 2018年度は、配位不飽和なカチオン性BPEP錯体の合成検討の過程で、剛直な縮環構造を持ったEind(1,1,3,3,5,5,7,7-octaethyl-1,2,3,5,6,7-hexahydro-s-indacen-4-yl)基を立体保護基とするPNPピンサー型ホスファアルケン配位子Eind2-BPEPと各種L型補助配位子を有する四配位白金(0)錯体を合成した。そして、単結晶X線結晶構造解析の結果から、この錯体が白金(0)錯体としては異常な平面四角形を取り、その平面構造がL型補助配位子の電子的特性に応じて変化することを見出した。また、DFT計算を用い、この構造の変化はL型補助配位子のπ受容性が影響していることを示した。さらに、L型補助配位子の電子的特性は錯体のHOMOのエネルギー準位を変化させ、その傾向は可視紫外吸収スペクトルに反映されることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった配位不飽和なカチオン性錯体を利用したFLPの構築には至っていないが、その過程で開発したEind2-BPEPを用い、各種L型補助配位子を有する四配位白金(0)錯体を合成した。さらに、この特異な白金(0)錯体の興味深い構造・性質を明らかにし、その結果が査読付き論文雑誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回合成した白金錯体をFLPのルイス酸として用いることは困難であった。一方、これまでにカチオン性銅(I)錯体がFLPのルイス酸として機能することを確認できている。今後は、鉄、コバルト、ニッケルなどの白金、銅以外の後期遷移金属についてもカチオン性のホスファアルケン錯体を合成し、FLP型の触媒としての応用を目指す。
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Causes of Carryover |
2017年度は京都大学にて研究協力者の学生3名と行っていた本研究であるが、2018年4月に申請者が産業技術総合研究所に異動したため、実験担当者が申請者1名のみになってしまった。そのため、本研究を遂行する契約職員雇用の人件費として本予算を使用することを念頭に公募を複数回行った。しかし、契約直前で先方の都合で契約が流れてしまうなど、契約職員雇用には至らず、次年度使用額分が発生してしまった。2018年度は申請者1名のみでどうにか研究を遂行していたが、2018年度中に他の大型予算を獲得したため、次年度において申請者が本研究に割けるエフォートには限界がある。そこで、2018年度に使用できなかった次年度使用額分は、引き続き本研究を遂行する契約職員雇用のための予算として使用する予定である。また、翌年度分として請求した助成金については予定通り、物品費、旅費として使用する。
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