2017 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Multi-decker Complexes Using Heterocycles
Project/Area Number |
17K14491
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西山 寛樹 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (60724359)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘテロサイクル / 多積層型高分子金属錯体 / 有機金属ポリマー / スタンノリル誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヘテロ元素を含む環状化合物(ヘテロサイクル)のジアニオン状態での特異な電子状態および反応性に着目し、これらのジアニオン状態のヘテロサイクルと多官能性の遷移金属塩との重縮合により、これまでにほとんど報告例のない新しいタイプの多積層型高分子金属錯体の合成を行う。本研究により得られる高分子金属錯体は、剛直な一本の高分子鎖中にπ配位子と遷移金属原子が交互に配列した極めて特異な構造を有しており、光機能性、レドックス特性、磁気特性や触媒能は従来の金属含有ポリマーとは一線を画することが期待される。 初年度は、単核チタナシクロペンタジエン誘導体とジクロロジフェニルスズとの反応により得られるスタンノール誘導体を合成し、さらにリチウム等の還元剤との反応を行うことでジアニオン種(スタンノリル誘導体)が効率よく得られることを明らかにした。また、得られたスタンノリル誘導体を二官能性モノマーとして用い、種々の多官能性の遷移金属塩との重縮合を試みることで本手法に適応可能な遷移金属種の選定を行った。例えば、スタンノリル誘導体と塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)との反応では一般の有機溶媒に難溶な固体が得られたことから目的のマルチデッカー型金属錯体の生成が示唆された。しかしながら、得られたポリマーは高い剛直性を有していることから溶解性に乏しく、今後、本手法により得られる多積層型高分子金属錯体の性質を詳細に評価するためには、溶解性を向上させる工夫が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、当初の計画通りモノマー(スタンのリル誘導体)の合成に成功したが、種々の遷移金属塩との重縮合により得られた多積層型高分子金属錯体は溶解性を向上させる工夫が必要であることが分かった。また、本手法により得られる多積層型高分子金属錯体の物性を詳細に理解するために合成を試みたモデル化合物(トリデッカー型錯体)については、その安定性の低さから単離に至っていないため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、上述のヘテロ元素を含むπ配位子の前駆体となる1,1-ジフェニルスタンノールに適切なソフトなセグメント(長鎖アルキル鎖等)を導入することにより、可溶性の多積層型高分子金属錯体の合成の可能性について検討を進める。さらに、得られる多積層型高分子金属錯体のモデル化合物となるトリデーカー型錯体の単離についても検討を進めることで、導入される遷移金属原子の種類や価数により特徴付けられる発光特性、酸化還元能、磁気特性や触媒能についての評価を行う。特に、多積層型高分子金属錯体はπ配位子と遷移金属原子が交互に連結した構造を有しており、遷移金属原子由来の酸化還元能や触媒能については隣接した遷移金属原子からのπ配位子を介した電子的、空間的な影響が強く反映されることが予想されるため、モデル化合物との比較を行いながら詳細に検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は当初予定していたモデル化合物の合成(単離)が達成されず、多くの時間を費やすこととなったため、計画通りの予算使用とはならなかった。次年度は、本研究により得られた多積層型高分子金属錯体の物性評価に関する経費として重点的に使用する予定である。また、当初の計画から若干遅れているモデル化合物の合成(精製)についても検討を進めるために、前年度から繰り越すことになった予算を試薬購入費などに当てる予定である。
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