2017 Fiscal Year Research-status Report
新しいイオン開環重合による非天然アミノ多糖の精密合成と特性解析
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17K14494
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
甲田 優太 京都大学, 工学研究科, 研究員 (90759325)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖鎖化学 / イオン重合 / 開環重合 / アミノ多糖 / 多糖材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度4月に採択され、初年度に当たる本年度は、非天然アミノ多糖を合成するための新しいイオン開環重合の反応開発を行なった。 (1)モノマー合成 N-アセチルグルコサミンをピリジンに溶解させ、無水酢酸を加えることにより、N-アセチルグルコサミンの水酸基の全てがアセチル基で保護された単糖(AcAGlu)を合成し、1H NMR, ESI-MS, APCI-MSにより合成の確認を行った。得られたAcAGluにルイス酸触媒を作用させ、グルコサミンの1,2位がオキサゾリンで閉環された単糖モノマー(GluOx)を合成した。抽出操作とシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離し、1H NMR, ESI-MSにより合成の確認を行った。 (2)環選択的イオン開環重合 求電子性カチオン種を発生させる開始剤にルイス酸触媒を組み合わせ、ハロゲン溶媒中でGluOxのカチオン開環重合を検討した。条件検討の結果、重合が進行し、比較的高い分子量のオリゴマーが生成した。1H NMRにより反応溶液を解析したところ、2つの閉環構造をもつGluOxのオキサゾリン環のみが選択的に開環して、重合が進行していることが確認できた。 (3)評価 得られたオリゴマーをSEC、ESI-MSにより評価した。SEC測定より、比較的分子量の大きいオリゴマーの生成が確認できた。さらに、ESI-MSスペクトルにおいて、モノマーユニットに相当する一連のピークが観測され、6量体までのオリゴマーの生成を確認した。さらに、1Hおよび13C NMR測定からも目的とするオリゴマーの生成が確認できた。また、CD測定を行うとコットン効果が確認され、得られたオリゴマーが規則的な2次構造を形成していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、新しい機構で進行する重合反応を開発し、酵素では合成できない非天然アミノ多糖を合成することである。これまでのオリゴ糖の全合成とは全く異なったアプローチによりアミノ多糖を合成することを目的としており、初年度では新しい重合反応の開発から着手した。着手前の予想とは異なり、想定していた重合機構では反応が進行しなかった。そこで、ビニルモノマーのカチオン重合の技術を応用し、重合条件の検討を行なった。具体的には、開始剤、ルイス酸触媒、モノマー濃度や重合温度を変化させて、重合挙動を詳細に調べた。その結果、目的とするオリゴアミノ糖を得ることができた。また、この重合挙動は、着手前に予想していた重合挙動であることも明らかになりつつある。 得られたオリゴアミノ糖の立体構造をNMRとCD測定により評価した。NMR解析の結果、各モノマーユニットは、α体とβ体がほぼ等量の割合で組み込まれていることが明らかになった。CD測定の結果、アセチル保護されたオリゴアミノ糖は、規則的な2次構造を形成し、脱保護したオリゴアミノ糖は、その2次構造を消失していることが明らかとなった。 上記の結果は、初年度の計画の主要な検討項目であり、研究計画は概ね予定通りに進行していると考えている。また、これら初年度の研究成果は、次年度の学会発表のみならず、学術誌への論文投稿の準備を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、初年度の研究計画は概ね予定通り進行しており、主要な検討項目は達成できている。しかしながら、新規化合物である本オリゴアミノ糖は、研究着手前には予想していなかった性質があることも明らかになりつつあるため、本年度は物理的性質を詳細に調べる予定である。また、この検討の際に、天然のアミノ多糖との性質の相違点なども明らかにしていきたいと考えている。
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