2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of on-site genetic testing system using compact disk-type microfluidic device
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17K14504
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
森岡 和大 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70794056)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CD型マイクロチップ / リアルタイム検出 / グルコース / 透明フィルムヒーター / 遺伝子検査 / LAMP法 / コメ品種判別試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,コンパクトディスク(CD)型マイクロチップと検出システムが一体化して回転する分析システムの改良と,透明フィルムヒーターを用いる等温遺伝子増幅-リアルタイム蛍光検出システムの構築およびその性能評価について検討した. ・CD型マイクロチップと検出システムが一体化して回転する分析システムの改良:本研究以前に開発した分析システムでは,CD型マイクロチップと共に回転する光学部品や電子部品を,加工したスチレンボードで固定し,そのボードとチップを共に回転させることで測定を実施していた.しかしこのシステムは,増加する回転数に制限がある,長時間の測定が困難である,測定再現性が低いなどの問題を抱えており,そのような点を克服するためにシステムの改良を行った.改良したシステムを用いてグルコースの定量を行ったところ,高い再現性で測定を実施することに成功した.また,酵素反応により増加するレゾルフィンの蛍光強度を,25分の間,リアルタイムにモニタリングできることを確認した. ・等温遺伝子増幅-リアルタイム蛍光検出システムの構築および性能評価:LAMP法に基づく遺伝子増幅過程のリアルタイム測定を実施するためには,70℃付近の定温で試料溶液を加熱しながら蛍光強度の経時変化を測定する必要がある.当初の計画では,光通過用の穴を中心部に形成したヒーターを有する透過型の蛍光検出システムを作製する予定だった.しかし,ヒーター中心部に穴があるために,検出チャンバー内の試料への伝熱ムラが引き起こされることが予想された.そこで,加熱とともに光を透過できる「透明フィルムヒーター」に着目し,このヒーターを用いる新たな蛍光検出システムを構築した.このシステムの性能をLAMP法に基づく遺伝子検査により評価したところ,陽性コントロールの試料溶液の測定において,経時変化する蛍光強度をリアルタイムに検出することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・CD型マイクロチップと検出システムが一体化して回転する分析システムの改良:まず,光造形方式3Dプリンターおよびフライス加工機を用いてアクリル製の治具を作製した.測定に必要な周辺機器を治具に固定し,CD型マイクロチップと共に回転する蛍光検出システムを構築した.改良したシステムの性能を,AmplexTM Redを基質とする酵素反応に基づくグルコースの定量により評価した.作製したCD型マイクロチップを検出システム上にセットし,遠心力により試料・試薬溶液を検出チャンバー内に順次導入することで測定を行った.その結果,本システムによる測定は,96穴マイクロプレートを用いる従来法と同等の感度を有し,相対標準偏差10 % 未満の高い再現性で測定を実施できることがわかった.また,酵素反応により増加する蛍光強度の変化を,25分の間,リアルタイムに検出することに成功した. ・等温遺伝子増幅-リアルタイム蛍光検出システムの構築および性能評価:透明フィルムヒーターの特性について評価した後に,このヒーターを用いて,透過型の蛍光検出システムを構築した.このシステムの性能を,カルセインの蛍光測定により評価した.その結果,検出限界(3σ)は0.85 μM,相対標準偏差(n = 4)は3.7 % と見積もられ,本システムによりカルセインが測定できることを確認した.次に,本システムを,LAMP法に基づくコメ品種判別試験に応用した.陽性コントロールおよび陰性コントロールをそれぞれ含む試料溶液を調製し,システムを用いて溶液を加熱しながら蛍光強度を測定した.その結果,陰性コントロールの測定では蛍光強度がほぼ一定値を示したのに対し,陽性コントロールの測定では時間経過とともに蛍光強度の増加が観測された.この結果から,開発したシステムでのLAMP法に基づく遺伝子増幅のリアルタイム検出が可能であることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,DNA抽出用CD型マイクロチップの作製およびCD型マイクロチップを用いる遺伝子検査システムの開発を行う. ・DNA抽出法用CD型マイクロチップの作製:この実験では,東洋紡製MagExtractorTM -Genome- を用いるDNA抽出操作をCD型マイクロチップ上で実施することを目標とする.まず,フライス加工機を用いて,リザーバー,チャンバーおよびマイクロチャネルを有するCD型マイクロチップを作製する.このチップを用いてDNA抽出操作を実施し,リザーバー,チャンバーおよびマイクロチャネルの形状について検討する.また,同試料を用いて,マニュアル操作(手技操作)によるDNA抽出を実施する.CD型マイクロチップとマニュアル操作で得られたそれぞれのDNA抽出溶液中に含まれるDNA量を比較し,溶液の使用量,DNA抽出量,再現性,抽出時間などについて詳細に検討する. ・CD型マイクロチップを用いる遺伝子検査システムの開発:遺伝子検査を行うためには,小型ヒーターおよび温度制御用電子回路を検出システムに内蔵する必要がある.そこでまず,小型ヒーターおよび温度制御用電子回路を用いて,遺伝子増幅の基礎検討を行い,加熱温度や遺伝子増幅に要する時間について検討する.その後,3Dプリンターおよびフライス加工機を用いて,ヒーター,電子回路および蛍光検出システムを固定できる冶具を作製する.測定に必要な周辺機器を冶具に固定し,システムを構築する.このシステムとCD型マイクロチップを組み合わせ,LAMP法に基づく遺伝子増幅を実施する.これにより,試料の使用量,遺伝子増幅にかかる時間,検出感度,測定再現性などについて詳細に検討し,開発したシステムにより遺伝子の定性・定量的な解析を実施できることを確認する. また,前年度(平成29年度)に得られた研究成果を,論文投稿や学会発表などで順次報告していく.
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