2017 Fiscal Year Research-status Report
触れるプラズマを用いた表面付着物質量分析装置の開発と残留農薬分析への応用
Project/Area Number |
17K14505
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岩井 貴弘 関西学院大学, 理工学部, 助教 (90756694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農薬分析 / プラズマ脱離イオン化法 / 温度制御プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
低温の高出力パルスマイクロプラズマを用いて,物体表面に付着しているマラチオン,アミトラズなどの殺虫剤の脱離・イオン化を行い,イオントラップ型質量分析装置に導入することで試料分子の質量スペクトルを得ることに成功した。しかし,試料によっては脱離効率が低く,実用的に十分な感度で分析できない場合があった。そこで,プラズマ化する前のガスを冷却・加熱することでプラズマガスの温度を制御する温度制御パルスマイクロプラズマを開発した。本装置を用いて試料に照射する部分のプラズマガスの温度を調整することで,熱による試料脱離を促進することができる。皮膚などの熱損傷が許されない基質上の試料に対しては高温のプラズマガスは適用できないが,温度制御プラズマでは零下から100 ℃以上までプラズマガス温度を自由に制御できるので,分析対象試料の熱脱離を促進しつつ,基質にも損傷を与えないような分析に最適なガス温度を選択することが可能になった。このプラズマ源を用いて,プラズマガス温度と各殺虫剤試料の分子スペクトルとそのフラグメントイオン生成の関係を調査した。そして,プラズマガスの温度を30℃から80℃にすることで,マラチオンの検出下限値を4.3 nmol から0.85 nmolに改善することに成功した。今後は,分析対象化学物質の物理的・化学的性質の違いが分析感度に与える影響の調査,実用的なサンプリングセルの開発,分析対象物質が付着している基質の影響調査などを行う
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に行う予定であった,試料脱離・イオン化の素課程を基礎検証は十分に行うことは出来ていないが,実用面で重要な役割を果たすと考えられる温度制御パルスマイクロプラズマを農薬分析に応用することができた。平成30年度にこの温度制御パルスマイクロプラズマを用いて脱離・イオン化の基礎特性調査を行い,結果を随時反映してより実用的な装置を作成することができれば,本研究課題の目的を十分に達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は①実用的なサンプリングセルの開発,②分析対象化学物質の物性の違いが分析感度に与える影響の調査,③分析対象物質が付着している基質の影響調査を行う。 ①実用的なサンプリングセルの開発:分析感度の向上と装置の小型化,実用性向上のため,温度制御パルスマイクロプラズマを内蔵したサンプリングセルの開発を行う。場合によっては,低出力レーザーによる脱離のアシスト,水素導入によるプロトン生成効率の向上などの検討も行う。 ②分析対象化学物質の物性の違いが分析感度に与える影響の調査:様々な化学物質を分析対象として分析を行い,蒸気圧やプロトン親和力など,その分析対象物質が持っている物理・化学的性質と分析感度の関連性を詳細に調査する。 ③分析対象物質が付着している基質の影響調査:樹脂や金属など,様々な物質を基質として農薬分析を行い,表面自由エネルギーや吸水率などの表面材質の特性が付着物の脱離に与える影響の調査を行う。
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Causes of Carryover |
物品の発注が年度内に間に合わなかったため。少額であるため書籍の購入費用などに充てる。
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