2017 Fiscal Year Research-status Report
レーザーアブレーション放出種の酸化過程の解明:分子発光を利用した新規分析法の確立
Project/Area Number |
17K14506
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松本 歩 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30781322)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レーザー誘起ブレークダウン分光法 / ロングパルスレーザー / 分子発光分光 / レーザーアブレーション / レーザープラズマ / 廃止措置 / その場分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原子力発電所の廃炉における原子炉内部のその場分析技術として、ファイバー伝送レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)が注目されている。これまで、ロングパルスレーザー(100 ns)を利用すれば分子の発光が著しく増大することを見出している。分子の発光は同位体シフトが大きいため、炉内デブリの同位体分析が実現する可能性がある。本研究では、ロングパルスLIBSによる分子発光分光分析の確立を目的として、レーザーアブレーション放出種の酸化過程を調べた。 空気中のジルコニウムをターゲットとして、発光スペクトルの時間分解測定(レーザー照射後0.5~5 μs)を行い、ZrO分子のバンドヘッド強度の時間変化を調べた。その結果、従来のノーマルパルス(6 ns)と比べて、ロングパルスでは、レーザー照射直後からZrO分子の強い発光が観測され、その発光が長時間継続することがわかった。また、ノーマルパルスでは、バンドヘッド強度が単調に減少するのに対し、ロングパルスでは、数マイクロ秒後にその強度が最大となることがわかった。 次に、プラズマ発光領域の高速イメージングを行い、プラズマの膨張過程を調べた。その結果、ノーマルパルスでは、発光領域がターゲット表面近傍で水平方向に膨張するのに対し、ロングパルスでは、発光領域がターゲット表面から十分に離れており、時間とともに上昇することがわかった。上記の結果に加えて、プラズマの温度、各種化学反応の平衡定数、反応種の密度、衝撃波について検討した。これらの結果から、ロングパルスでは、プラズマの上昇に伴い、周囲の気体が温度の低いプラズマ底部に流入し、アブレーション放出種の酸化反応が促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、プラズマ発光領域の高速イメージングや熱力学的考察により、ロングパルスによる分子発光増大のメカニズムの理解が予想以上に進んだ。一方で、模擬試料の分析に関しては、研究成果をまとめるに至っておらず、引き続き実験を行う必要がある。これらを総合的に踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施した高速イメージングでは、波長分解測定を行っておらず、アブレーション放出種や気体由来の元素のイオンや原子、分子などを含む発光領域を観測した。次年度は、特定の波長のみを透過するバンドパスフィルターを通して発光画像の測定を行い、原子と分子それぞれについて空間分布を調べることで、ロングパルスLIBSにおけるプラズマ中の化学反応をより詳細に議論する。また、発光スペクトルのパルスエネルギー依存性や分子発光を利用した模擬試料の分析に取り組み、廃炉現場におけるロングパルスの実用性について検討する。
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Causes of Carryover |
旅費の一部を研究グループの予算で補うことができたため。次年度は、光学部品や試料などを追加で購入し、さまざまな条件で実験を行えるようにする。
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Research Products
(4 results)