2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of radical induced dissociation tandem mass spectrometry
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17K14508
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
浅川 大樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60584365)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンデム質量分析 / ペプチド / ラジカル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の翻訳後修飾、特にリン酸化や糖鎖付加などによってタンパク質の活性が調節され、生命活動が営まれている。この翻訳後修飾の重要性は広く認識されるようになってきているが、タンパク質の中のどの位置に、どのような修飾が存在するのか、という詳細な情報を得ることは現在の分析手法では困難であることが多い。本研究では、この翻訳後修飾を含むタンパク質の「真の姿」を明らかにするために、タンパク質分析に広く用いられている「質量分析法」を高度化することで、タンパク質分析の基盤技術を構築することを目的とする。 我々が研究を行っているタンパク質のラジカルに伴う分解を利用したタンデム質量分析法は、タンパク質の真の姿を検出するために適した手法である。しかしながら実用への課題としては、分解効率が低い点である。この欠点から、微量にしか存在しない未知タンパク質試料には適用できていないのが現状である。本研究では、反応性の高い金属原子やラジカルなどの中性原子を質量分析装置内に導入しタンパク質イオンと反応させることで、ラジカル分解の効率を飛躍的に向上させることを目標とする。本研究の成果によって、これまで同定できなかったタンパク質内の翻訳後修飾の位置情報が得られるようになり、疾患の早期発見のためのバイオマーカー探索や治療薬の開発などへの貢献が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エレクトロスプレーー四重極飛行時間型タンデム質量分析計内で衝突室として用いられているイオンガイドを新規ラジカル誘起フラグメンテーション法の実証実験のために最適化したものを作成し、交換を行った。新たな構成においても、従来のタンデム質量分析装置と同様に、ペプチド・代謝物など生体分子の分析が可能であることを確認した。 本研究では、ペプチドやタンパク質イオンと金属原子の反応によりラジカル化を行う計画である。まずこの実験の準備段階として、金属原子源と四重極質量分析計を接続し、金属原子が真空中へ導入されていることを確認する実験を行った。この結果から通電加熱により金属原子を発生させるフィラメントが比較的安定的に使用でき、この研究に適していることがわかった。このフィラメントをエレクトロスプレーー四重極飛行時間型タンデム質量分析計に取り付け新規ラジカル誘起フラグメンテーション法の実証実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
通電加熱により金属原子を生成するフィラメントをエレクトロスプレーー四重極飛行時間型タンデム質量分析計に取り付け、新規ラジカル誘起フラグメンテーション法の実証実験を行う。蒸気のように、現在までに各々の環境において、金属原子の真空中への導入、衝突室を最適化したエレクトロスプレーー四重極飛行時間型タンデム質量分析計でのペプチドの計測という技術基盤が整っているので、これらを組み合わせることで、目標としていた新規ラジカル誘起フラグメンテーション法の実証が達成できると考えている。
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Causes of Carryover |
タンデム質量分析計を構築する予定であったが、廃棄予定の質量分析装置を再利用することで対応したため、新たに購入した部品が本研究に最適化した衝突室のみであったため、使用額が計画よりも小額となった。未使用額は、衝突室の電源、熱電対、ヒータやタンパク質など生体分子の購入費用に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)