2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14511
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 匡 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60462660)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 機能性小分子 / アクチン骨格 / 光制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチンは細胞骨格の一種であり,様々な外的な刺激や発生のコンテクストによって応答して,ネットワークが速やかに,また動的に再編成される.これにより細胞極性形成や神経突起の伸長,細胞運動などの細胞のダイナミクスが支えられている.本研究課題では,運動や細胞内物質輸送,細胞間の力の発生のといったさまざまな現象で多種多様な機能を果たす光によりアクチンを,時空間的に操作可能な技術を確立することを目的に,独自の発見に基づき光機能性プローブの開発を行っている. 申請者は,本研究課題とは別の目的の蛍光プローブの開発を行う過程で得られた蛍光色素がアクチン繊維を染めることを偶発的に発見しており,これが本研究課題の端緒となった.従来,アクチン繊維に高い親和性を有する化合物は,複雑な構造を有する非天然環状ペプチドや大員環ラクトンが報告されるのみであったが,申請者らの発見した分子はロドール類に属する非常に単純な蛍光分子でありながら,アクチンへの高い結合性を呈していた.本研究課題では「光によるアクチン繊維の制御」という目的を達成するために,この独自に発見したアクチン結合性色素骨格を元に,アクチン繊維への分子の結合とアクチン繊維の操作という 2つの機能を有する機能性分子の開発を行っている.初年度はアクチン繊維の結合に関して精査をすすめ構造活性相関の知見を得た.30年度においては,初年度において得られた構造活性相関の知見を発展させ,アクチン骨格の制御が可能な機能性分子の合成・開発をすすめ,生細胞系に応用することで,開発した分子の機能精査を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題申請時においては,アクチン繊維を可視化可能な蛍光プローブの開発を行うことを目的とし,研究を遂行しており,申請時の計画としては,『アクチ ン骨格の制御を司る機能性部位を骨格に対してどのように組み込むのか』,また,『光によるアクチン骨格への結合親和性の制御が可能か』に関して検討すべく,まずは色素骨格の誘導展開を行うことで構造活性相関の知見を得つつ,分子の機能化をすすめる計画とした. 2年目以降は,機能性分子の分子設計・開発を行い,分子の機能評価を行う計画であった.計画通り,初年度にえられた構造活性相関の知見に基づき,最適化された機能性分子の設計を行い,生細胞系での機能評価の光制御の機能評価を行った.計画に基づき,まずはアクチン繊維の分解を促進するタグを開発する戦略に則り,分子の開発を行った.この分子に関して,生細胞系への適用,精度の高い機能評価方法の確立などを推し進めており,計画通り研究を進展できている.また,分解因子を用いる戦略が十分に機能しない場合にバックアップとして計画していた他の戦略でも同時に分子開発が進行している.機能性の評価は,共通して用いることが可能な方法のため,戦略のことなる設計から開発された分子に関しても,速やかに評価系へと研究を進展させることができた.これまで機能性に関して,良好な感触を得ており,概ね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は予備検討の段階で,プローブの系統的な合成,in vitro/ in cellulo における結合活性の精査や,生細胞,固定細胞を用いた系において体系的なデータをスムースに得られる実験系の構築も完了していることから,ここまで順調に進行している.2年度目までにアクチン繊維の分解を惹起する分子の設計・合成を完了しており,in cellulo の系に応用し,アクチン繊維の分解が引き起こされるかどうか,またどのような経時変化となるのか等に関して精査を行っている.分子の機能性に関しては,ここまで概ね良好な結果が得られていることから,光照射を行う細胞特異的にアクチン繊維が崩壊する条件を見出すために,光学系の最適化等も必要となってくると考えている.また,開発した機能性分子が特定の細胞種の特定の条件化のみで機能するのではなく,一般的な生物学研究への応用が実用上可能であることを示すために,細胞の種類や培養条件などを変え応用範囲を探っていくことも重要であると考えている.培養細胞系で十分な結果が得られる場合には,初代培養細胞や,ex vivo やモデル動物系など高次の系への応用も視野にいれ,研究を展開していきたいと考えている.
|
Research Products
(3 results)