2017 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of cell differentiation signal with oligonucleotide-based growth factor mimetics
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17K14512
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植木 亮介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90755703)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 核酸アプタマー / 受容体シグナル / 増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の増殖・分化の制御を制御する増殖因子は、近年の細胞医工学・再生医療分野において広く注目を集めている。特に、iPS 細胞などの多能性幹細胞において、増殖因子を培地に添加することで、未分化状態の維持、あるいは種々の体細胞への分化が誘導されることが実証されており、臓器移植・創薬スクリーニングへの展開が期待されている。このような増殖因子シグナルに基づく幹細胞の分化制御技術の確立は長寿・健康社会の実現に向けた基盤技術と位置付けられている。一方で、天然タンパク質からなる増殖因子には 1)熱的安定性の低さ 2)ロット間の活性差 3)多大な製造コスト等の問題が存在し、これらの問題を解決する方法論が求められてきた。 本研究では、申請者らが開発した機能性核酸からなる「増殖因子ミメティクス」を幹細胞の分化制御技術へと展開することを目指す。具体的には、様々な構造的特徴を持つ増殖因子ミメティクスを用いて、増殖因子受容体のクラスタリング様式を制御を試みる。これにより、増殖因子シグナルの強度・パターンを制御する増殖因子ミメティクスを見出し、増殖因子シグナルを介したiPS 細胞の分化制御技術として適用することを目指す。 本年度は、標的とする増殖因子の受容体を標的とした新規リガンド分子の創出を行った。検討の結果、幹細胞の分化制御に関連する増殖因子のミメティクスとして機能する新規核酸配列の取得に成功した。また、開発された増殖因子ミメティクスを用いたiPS細胞の体細胞分化への応用実験へ向けた初期検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、標的とする増殖因子受容体に対する人工リガンド分子の設計を行った。幹細胞の分化状態制御への応用を念頭に置いて標的受容体の選定を行った。その後、進化工学的手法によって獲得された標的受容体に対する結合性核酸配列に基づき、数種類の人工リガンド分子を設計し、その結合評価を実施した。また、標的受容体の活性化に着目したアッセイを実施し、設計したリガンド分子が標的受容体のリン酸化を誘導する増殖因子ミメティクスとして機能することを見出した。また、細胞内のシグナル伝達分子の活性化状態に着目したアッセイを実施した結果、開発した増殖因子ミメティクスが受容体の活性化のみならず、細胞内シグナル伝達を誘起していることが確認された。 本年度は上記の検討と合わせて、開発した増殖因子の幹細胞培養への応用を見据えた初期検討を実施した。具体的には、既報論文に基づいて、標的とした増殖因子の有無によって幹細胞の分化状態が大きく変化する実験系を構築した。本実験系を利用することによって、開発した増殖因子ミメティクスが幹細胞の分化状態に与える影響を、天然増殖因子と比較しつつ評価することが可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度確立した幹細胞の分化状態の評価系を利用した、増殖因子ミメティクスの評価を遂行する予定である。また、増殖因子ミメティクスによって誘起される細胞内シグナル伝達パターンに着目した評価を実施し、幹細胞分化挙動と比較検証を行う予定である。
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