2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞内外で活性をスイッチする機能性核酸のIn-cell NMR法等を用いた創製
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17K14515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山置 佑大 京都大学, エネルギー理工学研究所, 研究員 (00778095)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 四重鎖核酸 / in-cell NMR / リボザイム / アプタマー / カリウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
GGAが繰り返す配列をもつRNAはカリウムイオン(K+)存在下でグアニン四重鎖と呼ばれるコンパクトな構造を形成する。これまでに、この構造変化を利用することで、K+依存的にハンマーヘッド型リボザイムの活性をスイッチ可能な四重鎖リボザイム(QHR)およびHIVウイルスのTatタンパク質を捕捉するRNAアプタマーの活性をスイッチ可能な四重鎖Tat捕捉アプタマー(QTAp)を開発した。平成29年度は、K+とK+キレート試薬を利用することで、QTApのアプタマー活性のオン/オフを可逆的に制御可能であることを示した。加えて、NMR法により、K+条件下におけるQTApの四重鎖構造およびアプタマー構造の形成を確認した。これによりQTApが設計意図の通りK+を感知して構造形成することで自身のアプタマー活性を制御していることを示した。以上の成果は学術論文として報告した。 また、生体内では細胞外のK+濃度が約5 mMであるのに対し、細胞内濃度は約100 mMであることが知られている。したがってQHRやQTApのようなK+応答性の機能性核酸は自身が細胞内および細胞外のいずれに存在しているのかを感知し、存在場所に応じて自らの活性をスイッチングする新しい機能性核酸と成り得る。そこで、平成29年度は細胞内の機能性核酸の構造や安定性をin-cell NMR法によって観測・評価するための手法開発を行った。まず、細胞膜上に可逆的に細孔を形成する毒素タンパク質SLOを用いて導入した核酸が主に核内に局在することを蛍光顕微鏡観察により明らかにした。さらにSLOを利用することで、ヒト細胞内に導入したDNAおよびRNAのNMRスペクトルを測定することに成功した。この結果、試験管内でヘアピン構造を形成する核酸はヒト細胞内においてもその構造を維持していることを示した。これらの成果は学術論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた通り、まずは試験管内において高性能に機能するカリウムイオン応答性の四重鎖アプタマーを開発することに成功した。さらにこの機能性核酸が活性をスイッチする機構についても実験的に確認できた。平成29年に予定していたカリウムイオン応答性の機能性核酸の細胞内活性の評価については進行中であるが、平成30年に実施を予定していたin-cell NMR法を用いた細胞内の機能性核酸の構造および安定性評価手法の確立は順調であり、細胞内に導入した核酸に関して良好なスペクトルが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、試験管内においてカリウムイオン応答性の機能性核酸の改良を進める。細胞破砕液内および親水性ポリマーを利用した疑似細胞内環境下においても活性のオン/オフが可能となるように配列の改良を行う。また、予定通りin-cell NMR法を用いた細胞内の機能性核酸の構造および安定性評価手法の確立についても引き続き進めていく。現在、細胞内に導入した核酸に関して良好なスペクトルが得られつつあるため、イミノプロトンシグナルの観測により細胞内における核酸の構造形成および構造安定性を評価していく。
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Causes of Carryover |
NMR装置の使用可能時間を鑑み、平成30年度に予定していたin-cell NMR法の条件検討を平成29年度に行った。結果として、当初平成29年度に予定していた種々の配列の核酸を設計、購入し、カリウムイオン応答性リボザイムおよびアプタマーが細胞内環境で機能するように最適化していく段階を平成30年度に行うこととし、このための予算を次年度使用額として繰り越した。
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