2017 Fiscal Year Research-status Report
過剰伸長RNAリピートを選択的に加水分解する低分子の開発
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17K14516
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛史 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (80633263)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トリヌクレオチドリピート / RNA / 低分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、神経変成疾患の原因となる過剰に伸長したRNAリピートを配列選択的に加水分解する低分子の開発とその応用展開を目的とする。過剰伸長RNAリピートは、核内に滞留しMBNL1などのスプライシング制御因子群とフォーカスと呼ばれる複合体を形成し、スプライシング制御因子の機能喪失を引き起こすことが分かっている。申請者はこれまで、TNR 病の発症機構の解明と分子プローブの開発に取り組み、その研究成果の一つとして、RNA中のミスマッチ塩基対近傍でリン酸ジエステル加水分解を促進するある分子プローブを見出した。過剰伸長したリピートRNAが形成するヘアピン構造には多数のミスマッチ構造が生じることから、ミスマッチ結合分子に結合して近傍のリン酸エステル加水分解を誘導する低分子は、リピートRNA選択的な加水分解を促進する可能性がある。本申請研究で開発する分子プローブを用いて、核内に滞留する過剰伸長 RNAリピートを選択的に加水分解してフォーカスの形成を阻害し、神経変成疾患の発症を抑制することを最終的な目標とする。 今年度は、核酸中のGGミスマッチを認識する分子NCDに求核性置換基であるチオール基をリンカーを介して有するNCD-C3-SHのRNA加水分解に与える影響を、HPLCとMALDI-TOF-MASSをもちいて詳細に解析した。結果、RNA二重鎖中のC-Cミスマッチ部位でリン酸ジエステルの切断が選択的に起こることを確認した。しかしながら、リン酸ジエステルの切断部位とミスマッチ部位の分子認識にもあまり相関は見られなかった。また、NCD-C3-SHのデザインを基に、ミスマッチ結合分子NCDと切断活性を有すると考えられる官能基ををリンカーで結合した分子のミニライブラリーを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
N-N(N = U, C, A, G)ミスマッチ構造を有する二重鎖 RNA とNCD-C3-SH を生体内類似の条件下反応させて、ミスマッチRNAの加水分解実験を行った。反応の推移は逆送HPLC をもちいて追跡し、分取したフラクションは MALDI-TOF-MASS で精密に同定した。結果、ミスマッチ結合分子であるNCDにアルキルチオールを結合したNCD-C3-SHは、若干ながらC-CミスマッチRNAのリン酸ジエステル結合の加水分解を示した。しかしながら、NCD-C3-SHが触媒するリン酸ジエステル切断反応の反応速度は、研究開始時に想定したほど高くなかった。また、リン酸ジエステルの切断部位とミスマッチ部位の分子認識にもあまり相関が見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、GGミスマッチ認識部位としてもちいたNCDのRNAへの結合が弱いことが原因の一つとして考えられる。NCDはGGミスマッチDNAへは強固に結合することがわかっていたものの、RNAへの結合はDNAへの結合に比べてだいぶ低いことが二重鎖融解測定の結果等よりわかった。これを踏まえ、ミスマッチRNAに強固に結合する認識部位の開発・NCDに強固に結合するミスマッチRNAの探索などを同時並行で行い、リン酸エステル加水分解と認識部位との結合能の定量的構造活性相関を行いたい。また、切断活性部位として、これまでスクリーニングしたチオール基やヒドロキシアミノ基に加え、システイン・ヒスチジンなどRNA切断酵素の切断活性残基を一つまたは二つ有する多様なリガンドを準備し、作成したミニライブラリーを用いて、様々な長鎖RNAリピートの切断活性を探索する予定である。リン酸ジエステル結合の加水分解活性の探索は、今年度確立した方法に準拠して行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は消耗品の購入に予算を申請したが、実際には分取HPLCの購入とそれに付属させるサイズ排除カラムの購入に使用した。差し引き349,822円が残ったので、来年度の消耗品購入に使用する。
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