2017 Fiscal Year Research-status Report
蛍光プローブによる生きたガン細胞での脂肪酸代謝活性解析と阻害剤開発
Project/Area Number |
17K14518
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内之宮 祥平 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10770498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 代謝 / 脂肪酸β酸化 / ケミカルバイオロジー / 生細胞イメージング / 蛍光プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
ガン細胞での代謝は通常細胞と大きく異なるため、これを解明し創薬につなげる研究が盛んに行われている。しかし、従来の同位体標識した化合物などを用いる手法では細胞を破砕するため、生細胞での情報を得ることは難しい。そこで生細胞での解析を可能とする蛍光プローブの開発が望まれるが、代謝関連酵素の基質選択性の高さなどが原因となり、代謝経路を検出するための蛍光プローブの開発例はほとんど無い。本研究では代謝経路、特に最近ガン細胞での重要性が指摘されて始めた脂肪酸β酸化を検出するための蛍光プローブを初めて開発することを目指す。これによりガン細胞の脂肪酸β酸化依存性を生細胞で初めて明らかにすること、さらに蛍光イメージングを利用した新規阻害剤の探索を目標とする。平成29年度においては、脂肪酸β酸化を蛍光イメージングするシステムの構築を目指した。脂肪酸β酸化の進行に伴う色素の自発的脱離を蛍光センシングシステムとして採用し、蛍光色素に脂肪酸を導入したプローブを設計した。基質となる骨格を探索するために様々な骨格の蛍光色素を有するプローブ群を合成し、これらを肝臓ガン由来のHepG2細胞に添加しその挙動をHPLCで解析した。その結果クマリンを有するプローブが脂肪酸β酸化の基質となりうること、さらにクマリン骨格を検討することでβ酸化の進行とともにクマリンが放出されるプローブの開発に成功した。この挙動は共焦点レーザー顕微鏡でも確認され、脂肪酸β酸化の生細胞でのイメージングに初めて成功した。本システムは、従来の単一の酵素反応のみを検出するのではなく、複数の酵素群からなる代謝経路を検出可能である点でも新しい手法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪酸β酸化の進行に伴い蛍光色素が放出されるシステムの構築に成功したこと、さらにそれを用いて生細胞での脂肪酸β酸化の検出に初めて成功したことから、本研究計画は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
他のガン細胞株での脂肪酸β酸化の検出を行うことで、ガン細胞株ごとの脂肪酸β酸化活性の違いを生細胞蛍光イメージングによって検討する。また、様々な刺激に伴う脂肪酸β酸化活性の変化を生細胞で初めて明らかにし、本システムが脂肪酸β酸化活性を生細胞で評価可能であるツールであることを示す。さらに、脂肪酸β酸化の阻害剤はほとんど知られていないことから、蛍光イメージングを基にした阻害剤アッセイにも挑戦する。
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