2017 Fiscal Year Research-status Report
尿毒症症状改善に向けたインドール吸着合成ナノ粒子の開発
Project/Area Number |
17K14519
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小出 裕之 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (60729177)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 高分子 / 腎臓病 / インドール / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質―タンパク質間の強い結合は、それらを構成するアミノ酸の性質により水素結合、疎水性相互作用、静電的相互作用などの多種多様な結合が広範囲に渡って組み合わさることで生み出されている。我々は、これらの相互作用を生み出す機能性モノマーを用い、抗体のように標的生体高分子に対して強く結合する多官能性ポリマーナノ粒子 (NPs) の合成・開発を試みてきた。しかしながら、非分解性であるNPsは、実用化(臨床応用)という観点から考えると静脈内投与剤として用いるよりも、経口投与剤として用いるほうが適している。そこで本研究では、消化管でインドールを吸着して体外へ排泄させる経口投与型のナノ粒子開発を行い、腎不全治療への応用を試みた。 インドールを吸着するナノ粒子開発に向けて、ナノ粒子は 2%架橋したpoly N-isopropyl acrylamide (pNIPAm)に、数種類の疎水性モノマーを組み込み合成した。合成したNPsとインドールを室温にてインキュベートした後に超遠心分離を行い、インドール吸着率を算出した。NPsとインドールとの相互作用は、ナノ粒子に組み込む疎水性モノマー構造と配合比によって大きく変化することが明らかになった。また。NPsの吸着選択性を明らかにするため、カルボキシ基をもつインドール酢酸、アミノ基をもつトリプタミン、両基をもつトリプトファンの3つの化合物をインドール類似低分子化合物として、シアノコバラミン (ビタミンB12) を腸内に存在する高分子化合物として用いた。その結果、インドール誘導体であるインドール酢酸、トリプタミン、トリプトファン、シアノコバラミンの吸着量は、インドールの吸着量と比較して有意に低いことが明らかになった。以上より、NPsは消化管でインドールを素早く選択的に吸着し、体外への排泄を促すことで、腎不全の悪化を抑制できる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドールの高い疎水性と芳香族性に着目し、ナノ粒子はN-Isopropyl acrylamide (NIPAm)、N,N'-Methylenebisacrylamideに加えて疎水性モノマーであるN-tert-Butyl acrylamide (TBAm) 、芳香環を持つN-Phenyl acrylamide (PAA) 、もしくはPAAの環炭素原子に結合している5個の水素原子をフッ素で置換した2,3,4,5,6-Pentafluolophenyl acrylamide (FluoroPAA)を用いて合成した。合成したNPsのインドール吸着率は、インドールと10秒間インキュベート後に超遠心分離を行い算出した。その結果、疎水性モノマーを組み込まないで合成したナノ粒子は、殆どインドールを吸着しなかった。疎水性モノマーの組み込み率を20%から80%に増やすことで、インドールの吸着率も増大した。また、各疎水性モノマーを比較すると、TBAmもしくはFluoroPAAを含有したナノ粒子はPAAを含有したナノ粒子と比較して顕著にインドールを吸着した。しかし、TBAmとFluoroPAA含有ナノ粒子を比較すると、顕著な差はみられなかった。FluoroPAAを含有したナノ粒子はインドールの構造類似化合物(トリプタミン、インドール酢酸、トリプトファン、ビタミンB12)と3時間混合しても、ほとんど吸着しなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者らは、静脈内に投与されたナノ粒子が、30分後に血液中に5%以下の残存量で、多くは肝臓に蓄積することや、4週間後には95%以上は体内から消失することを明らかにしてきた。しかし、経口投与後の体内動態は明らかではない。そこで、今後の方針としては、経口投与したナノ粒子の血中以降量、時間依存的な腸内残存量、糞への排泄量の解析を行なっていく。経口投与後の体内動態の解析は、経口製剤の開発に向けて非常に重要である。経口投与後のナノ粒子の体内動態を決定する要因としては、ナノ粒子の電荷(正、負電荷)、疎水性度、サイズ、架橋剤の割合があげられる。そこで、これらの性質の異なるナノ粒子ライブラリーを合成し、体内動態を測定する。そして、血中に移行せず、腸内に蓄積せず速やかに体内から排泄されるナノ粒子の組成を明らかにする。 体内動態研究の後、実際にナノ粒子の消化管でのインドール吸着能と吸収阻害効果を検討する。まず、放射標識インドールとナノ粒子を経口投与し、排泄量、血液中への移行量、腎臓での蓄積量を検討する。また、インドールは経口摂取されたトリプトファンから生合成される。そこで、トリプトファンの放射標識体を経口投与した後にナノ粒子を経口投与し、血液、腎臓、肝臓、消化管、消化管内の放射活性を測定し、消化管でのインドール吸収阻害効果を明らかにする。また、本検討を絶食時と通常食時に行うことで、食事の影響を明らかにする。本検討を通して、ナノ粒子の経口投与剤としての有用性を明らかにする。
|
-
-
-
[Journal Article] A polymer nanoparticle with engineered affinity for a vascular endothelial growth factor (VEGF165).2017
Author(s)
Koide H, Yoshimatsu K, Hoshino Y, Lee SH, Okajima A, Ariizumi S, Narita Y, Yonamine Y, Weisman AC, Nishimura Y, Oku N, Miura Y, Shea KJ.
-
Journal Title
Nat Chem
Volume: 9
Pages: 715-722
DOI
Peer Reviewed
-
-