2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of the self-migration system introducing microorganism or enzyme catalysis, and application to collectable adsorbent on the surface of water after adsorption.
Project/Area Number |
17K14522
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Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
三原 義広 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (90733949)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 吸着材 / 水質浄化 / 自律浮沈 / イースト / グルコース |
Outline of Annual Research Achievements |
アルギン酸ゲルビーズに、イーストとグルコースからなる発酵システムを導入し、発酵で発生する二酸化炭素の気泡を浮きとして、浮上と沈降を繰り返す鉛直回遊性を有する吸着材料を構築した。これはアルギン酸ゲルビーズ内でイースト菌(Saccharomyces cerevisiae)がグルコースを二酸化炭素に変換する発酵現象を引き起こすことで、生成された二酸化炭素よりアルギン酸ゲルビーズの比重が1未満となり浮上するというものである。本研究では、アルギン酸ゲルビーズ内部での炭酸ガスの蓄積過程の様子や水面上でのゲル表面上の炭酸ガスの消失過程の様子を、顕微鏡の観察から考察した。アルギン酸ゲルビーズの自律浮沈(回遊)時間は、グルコース濃度が5(w/w%)のときに、約6時間であったのに対し、グルコース濃度が10(w/w%)、30(w/w%)になるにつれ、12時間、48時間と変化した。温度条件が20℃のとき、アルギン酸ゲルビーズ投下後12時間までの浮沈回数は9回であった。しかし、浮沈回数は水温によって大きく異なった。この理由として、イーストは温度の低い条件でも発酵する。しかし、アルギン酸ゲルビーズの浮力に変化を与える炭酸ガスの生成量は少ないためと考えられる。一方、水温30℃では、イーストの活性が高くなり、アルギン酸ゲルビーズの浮力に変化を与える炭酸ガスの生成量も増加するが、ゲル内に蓄積される炭酸ガスも増加するために、水面上に浮いている時間が長くなった。このため、グルコース発酵に関与するイーストの活性は、アルギン酸ゲルビーズの浮沈回数にも影響を与える。一方、アルギン酸ゲルビーズに内包したグルコースが直接外部へ溶出することを防ぐためにグルコースから米麹に切り替えたところ、ゲル内部のグルコース濃度を安定化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸着材が汚染水中を上下に行き来しながら、能動的に汚染物質を吸着し、その後に吸着剤が水面に浮上し、吸着剤の投与と回収を考慮した新たな吸着システムの構築では、上述した挙動を吸着剤の機能として仕上げるために、どのような温度やpH であっても、材料の浮力や比重を自己制御でき、吸着剤が汚染箇所で汚染物質の吸着または分解を促進することを明らかにすることをH29年度の目標とした。公共水域または大型タンクに対応しうる水温やpHであれば、吸着剤の支持体に発酵や分解反応を導入することで、気体あるいは気泡の発生と消失が吸着剤の内部で繰り返され、吸着剤の浮力が短期間で変化することで自律浮沈機能を証明できた。また、具体的な鉛イオン、セシウムイオン、カドミウムイオンの吸着回収を確認することができた。このような浮き沈みを自律的に行う吸着材料は、撹拌が困難な水環境や大型のタンクなどの汚染物質を効率よく吸着回収でき、従来の廃水処理方法に関連する諸問題を解決し、再生処理が簡便であり、廃水処理漕から容易に流出せず、効率的な撹拌と回収とを可能にする廃水処理剤を提供できる。また、本研究を実際の水質浄化材として活用する場合には、ゲル内部のグルコース濃度が一定であり、かつグルコースが外部に漏出するのを防ぐ必要がある。この解決手段として米麹の糖化による自律浮沈が有効であることがわかった。そのほか、グルコースの溶出を防ぐ手段としてタンパク質に固定したグルコアミラーゼによるデンプンの分解から得たグルコースによってゲルビーズの浮上を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
吸着剤が水中を上下に行き来しながら、能動的に汚染物質を吸着し、その後に吸着剤が水面に浮上し、回収できる機能を有する新たな機能は、単に吸着システムだけでなく、エネルギー分野(自律浮沈・回遊による微小発電)または水産養殖業(畜魚への給餌)への展開が期待されている。すなわち、アルギン酸ゲルビーズの多層構造(コアシェル)化を目指した機能を構築したい。たとえば、アルギン酸ゲルビーズに酵母または微生物を導入すると、ゲルビーズ内部で気泡が発生または消失し、浮力の一時的な変化によってゲルビーズが水底と水面の間を自律的に往来する機能を基本構造(核)とする。その外層部には、吸着剤の機能としてだけではなく、発光体やセンサー、磁性材料などを積層する。外層部にアミノフェロセンを吸着、またはグラフェンを内包したアルギン酸ゲルビーズをモデル吸着剤として作製し、汚染源となりえる水底、水面あるいは水中にプレート電極を設置し、ボルタンメトリーによる電気化学的な信号の変化からアルギン酸ゲルビーズの滞留時間または自律浮沈の回数を確認する。さらにはマグネタイトなど磁性材料を内包することで、水中からの材料の回収を確認する。赤外分光法で吸着剤内部のCO2の量を定量し、自律浮沈の動的メカニズムを検証する。本研究の推進によって、自律浮沈、センサーの信号、磁石による回収など様々な機能を付与した機能性アルギン酸ゲルビーズの開発を前進させる生体機能性材料を用いた電気化学的センサーの開発につなげて行きたい。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた、試薬、酵素および電気化学分析用の電極などの購入費が少なく済んだため。また該当年度においては特許出願前という理由より、学会参加費、旅費が不要であった。次年度においては特許出願後に学会発表を行なう予定である。また、電気化学分析用の電極やセルバイアルなどを特注するため、これを次年度使用額とあわせて研究を遂行する。
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Research Products
(2 results)