2017 Fiscal Year Research-status Report
Density Form for Electronic Transitions: Applications to Molecular Design for Electroluminescent Materials
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17K14529
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
志津 功將 京都大学, 化学研究所, 助教 (10621138)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 輻射遷移 / 遷移双極子モーメント / 無輻射遷移 / 内部転換 / 振電相互作用 / 項間交差 / スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子有機材料の特性を理解する上で重要な諸性質として、分子間で生じる遷移双極子モーメントや振電相互作用、スピン軌道相互作用があげられる。これらの諸性質は材料の示す輻射遷移(蛍光、りん光)ならびに無輻射遷移(内部転換、項間交差、電子移動)の速度と関係するため、その基礎的な理解は発光材料の発光効率や電荷輸送材料の電荷輸送特性、ホスト材料の励起子輸送特性を理解する上で重要である。しかしながら、一般に、量子化学に基づいて分子の諸性質を計算する数式は複雑であり、理論を専門としない研究者にとって、諸性質の起源を直感的に理解することは難しい。そこで、本研究では、複雑な数式を3次元の立体画像として視覚化することで、分子の諸性質を直感的に理解できる量子化学計算プログラム(Density 77)の開発に取り組んだ。このプログラムを使用すれば、複雑な数式を使わずとも材料の諸性質を直感的に理解することが可能である。 今年度は2分子系の遷移双極子モーメントならびに振電相互作用定数を計算するためのモジュールを開発し、テストジョブとしてテトラセン2分子からなる粒子系について計算を実行した。また、これらの諸性質の起源をcubeファイル形式で出力させ、可視化ソフトウェアに読み込ませることで、3次元の立体画像として視覚化できることを確認した。視覚化した立体画像を見ることで、遷移双極子モーメントの大きさ(光子の放出のしやすさ)と振電相互作用定数の大きさ(熱失活のしやすさ)の起源を直感的に理解できることがわかった。上記の一連の手続きは、PC上のタイピングとクリック操作によって容易に実行でき、複雑な数式を必要としない。本研究で開発したプログラムは分子の諸性質を直感的に理解し、分子設計に活用するための手段として有用であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した研究によって、実際の有機デバイスに使用されているようなサイズの低分子有機材料について、分子間で生じる遷移双極子モーメントや振電相互作用といった諸性質を計算できる量子化学計算プログラム(Density 77)の開発に成功した。また、Density 77を使用して得られた計算結果を3次元可視化ソフトウェアに読み込ませることで、諸性質の物理的起源を視覚化して理解できるようになった。研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
低分子有機材料の特性を理解するための重要な諸性質として、分子間で生じる遷移双極子モーメントや振電相互作用の他にも、項間交差の原因となるスピン軌道相互作用や励起子の移動を引き起こす蛍光共鳴エネルギー移動、デクスター型のエネルギー移動があげられる。今後、これらの諸性質を扱えるよう、プログラムを発展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
理由:論文の英文校正費用ならびに投稿料を次年度に繰り越しをしたため、次年度使用額が生じた。
使用計画:論文の英文校正費用ならびに投稿料として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)