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2017 Fiscal Year Research-status Report

分子論的立場からの結晶性高分子の変形・破壊プロセス

Research Project

Project/Area Number 17K14534
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

樋口 祐次  東京大学, 物性研究所, 助教 (30613260)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2019-03-31
Keywords結晶性高分子 / 変形 / 破壊 / 粗視化分子動力学法 / 大規模計算 / 座屈 / 断片化
Outline of Annual Research Achievements

フィルムやプラスチックの材料である結晶性高分子の変形・破壊プロセスを分子論的立場から解明することは、衝撃や変形に対する耐久性の高い材料の分子設計へとつながることから、省資源・安全性の観点で急務の課題となっている。本研究は、粗視化分子動力学シミュレーションにより、代表的な結晶性高分子であるポリエチレンの基本構造(ラメラ構造)の機械的特性を分子スケールで解明することを目的とする。具体的には機械的特性に影響を与える複雑な要素(結晶化度や結晶の厚さなど)を一つずつ解明していく。
本年度はラメラ層が平行に並んだ理想的なモデルを検討した。結晶性の違う構造や分子量分布の異なる場合のラメラ構造を作成し、機械的特性に与える影響の解明に取り組んだ。絡み合い等の分子スケールの構造を変えることで、異なる結晶化度や結晶厚の構造作成に成功した。変形・破壊プロセスにおいて、タイ分子と絡み合いが引っ張りに対して応力を伝播することを確認した。ひずみを一定にすると、タイ分子に比べて絡み合いは応力が緩和していくことを明らかにした。さらに、欠陥がある構造を作成しても、空孔が生成するまでは応力分布にほとんど差が出ないことを明らかにした。実験で解明することは困難な、タイ分子や絡み合いが応力を伝播する役割を解明することに成功した。分子スケールの構造と応力の関係性を解明することで、機械的特性の高い材料設計に役立つと考えられる。
600万モノマーから構成される大規模計算を実施し、結晶層の座屈や断片化の観察に成功した。これらの破壊プロセスは電子顕微鏡像で観察されており、実験結果と目で見て比較することが可能になったことを意味する。座屈やブロック状での破壊プロセスは200万モノマー程度では観察されていないことから、計算規模を大きくすることで解明可能な現象の質が向上したことを示唆する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初の計画通り、結晶化度の影響、大規模計算、分子量分布の影響などを分子スケールの構造に着目してメカニズムを解明した。これまでの成果は論文として一報採択され、もう一報執筆中である。さらに、下記の項目は当初の計画以上に進捗している。当初の計画より大規模な計算を実施することに成功した。1200万モノマーから構成されるラメラ構造の伸長にも成功しており、引張りひずみ速度を遅くすると空孔が生成せず、変形のみ起こることを明らかにした。計算規模を大きくすることで、遅い引張りひずみ速度の計算が可能となり、空孔の生成条件の分岐を解明した。大規模な計算を想定し、当初の計画にはなかったプログラムの改良にも取り組んだ。ファイルの入出力の改善や、計算の高速化等のプログラム改良にも成功しており、次年度以降の研究を実施する体制も整っている。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度はラメラ層が平行に並んだ理想的なモデルを検討した。平成30年度は実際の材料で問題となる点や分子設計を目指した研究へ発展させる。具体的には環状鎖混入の影響、理想的な構造から崩れた構造の影響、大規模計算による空孔の生成・成長プロセスの解明に取り組む。材料では用途別にヤング率、降伏強度、降伏ひずみの制御が求められていることを考慮し、引っ張り初期の弾性領域と、局所的な変形や空孔の生成が観察される破壊領域で、分子スケールの構造が機械的特性に与える影響を解明する。複雑な要素が機械的特性に与える影響を解明し、ヤング率、降伏強度、降伏ひずみに関して最適な組み合わせを探索する。計算の高速化や最適化などは当初の計画にはなかったが、随時プログラム改良や高機能化を実施する。結晶化度、結晶厚、異物混入の影響を理論的に解明することで、ヤング率・破壊特性の制御した理論的に最適な材料を提案し、壊れにくい結晶性高分子材料の設計を目指す。

Causes of Carryover

予想よりも研究が進捗したため、当初の計画よりも少ない予算で研究を遂行できた。一方で、計算データが膨大となったことから、平成30年度の初めに大容量のファイルサーバを新たに導入する。研究計画に支障はない。

  • Research Products

    (5 results)

All 2018 2017

All Presentation (5 results)

  • [Presentation] 大規模粗視化分子動力学法を用いた結晶性高分子の破壊シミュレーション2018

    • Author(s)
      樋口祐次
    • Organizer
      第1回ポスト「京」萌芽的課題「基礎科学の挑戦」・「極限マテリアル」 合同公開ワークショップ
  • [Presentation] 結晶性高分子の破壊プロセスにおける分子スケールの応力伝播素子2018

    • Author(s)
      樋口祐次
    • Organizer
      日本物理学会第73回年次大会
  • [Presentation] 粗視化シミュレーションによる半結晶高分子の破壊プロセスへのアプローチ2017

    • Author(s)
      樋口祐次
    • Organizer
      つくばソフトマター2017
  • [Presentation] 粗視化分子動力学法による結晶性高分子の破壊におけるラメラ厚の影響2017

    • Author(s)
      樋口祐次
    • Organizer
      日本物理学会 2017年秋季大会
  • [Presentation] 粗視化分子動力学法によるポリエチレンの破壊プロセスにおける応力伝播2017

    • Author(s)
      樋口祐次
    • Organizer
      第31回分子シミュレーション討論会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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