2017 Fiscal Year Research-status Report
超弾性レジリンモデルハイブリッドポリペプチドの創製
Project/Area Number |
17K14540
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福岡 徳馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90415737)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 弾性タンパク質 / 人工ポリペプチド / バイオエラストマー / レジリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では昆虫の外骨格を形成する高弾性タンパク質である「レジリン」をモデルとした人工ポリペプチドの創製に取り組んだ。レジリンの代表的な繰り返しアミノ酸配列として知られる、キイロショウジョウバエ由来レジリンのExon Iドメイン(GGRPSDSYGAPGGGN)とExon IIIドメイン(GYSGGRPGGQDLG)、ガンビエハマダラカ由来レジリンの配列(AQTPSSQYGAP)の3種類に焦点を当て、遺伝子工学的手法を利用して大腸菌発現系により、これらが8~32回繰り返されるポリペプチド、およびこれらが連結したブロック共重合体状のハイブリッドポリペプチドを得ることに成功した。 これらのレジリン模倣ポリペプチドについて、配列の種類、繰り返しの回数(分子鎖長)により生産性に大きな差があることを確認するとともに、一部の配列では菌体内に生成した目的ポリペプチドの大部分が可溶性ポリペプチドとして容易に回収できることを突き止めた。高分子材料としての利活用を念頭に、分子量が10*4オーダーとなる16量体以上のホモポリペプチドおよびハイブリッドポリペプチドについて、His-Tagタンパク質としてNiアフィニティーカラムで回収できることを確認し、その分離精製条件を確立した。このようにして得られた精製ポリペプチドは、MALDI-TOF/MS分析により分子量が単一のポリマーであることを確認した。 今後は生産条件のカスタマイズを進めることで目的ポリペプチドをグラムオーダーで取得することを目指すとともに、得られたポリペプチドからフィルム、ゲル等を作成し、その諸物性の解析と配列の違いによる機能比較を行う。また、酸化還元酵素等によりポリマー鎖中に存在するチロシン残基を酸化カップリングすることで機械物性の向上と制御を狙う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画では、上記3種類のアミノ酸配列が複数回繰り返されるポリペプチド、特にブロック共重合体上のハイブリッドポリペプチドの生産に注力した。現時点でこれらが8~32回繰り返される人工ポリペプチドを合計42種類得ることに成功しており、当初の計画通り着実に研究が進展している。 また、カラムクロマトグラフィーを用いた目的ポリペプチドの分離精製法を確認し、単離したポリペプチドの分子量測定の結果から目的のポリペプチドが単一分子として得られたことが確認できており、次年度以降の研究の展開に向けて順調にステップを踏んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたポリペプチドからフィルム、ゲル等を作製し、その諸物性の解析を進めることで分子構造(アミノ酸配列)の違いによる機能比較を行う。まずはポリペプチドの生産条件をカスタマイズし、目標である生産収率100 mg/L以上を目指して条件検討を進め、目的ポリペプチドをグラムオーダーで取得する。十分な量のポリペプチドを確保したところで、キャスト法によるフィルムの作製を行い、熱物性の測定や引張試験等に取り組む。また、酸化還元酵素等を使用してペプチド鎖中に含まれるチロシン残基の酸化カップリング反応を介したハイドロゲルの作製にも取り組む。
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Causes of Carryover |
本研究計画の後半では、今回設計・合成したポリペプチドからフィルムやゲル等の高分子材料を作製し、その物性比較を進める。実験で用いるポリペプチドを大量に確保するためには、大腸菌の培養とポリペプチドの回収、精製を継続して連続的に行う必要があり、その作業を担当する研究補助員を雇用するための人件費として、2年目の後半から3年目に掛けて予算を充当する予定である。
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