2017 Fiscal Year Research-status Report
Structure/physical properties control of flexible macroporous nanofiber monoliths by compressive deformation
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17K14541
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早瀬 元 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (70750454)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エアロゲル / クライオゲル / 有機-無機ハイブリッド / ナノファイバー / ゾル-ゲル法 / モノリス型多孔体 / 力学特性 / 断熱材 |
Outline of Annual Research Achievements |
セラミックス、有機ポリマー、コルク等の天然物から成る塊状(モノリス型)多孔体は古くからさまざまな用途に利用されてきた。これらは粉体や薄膜とは異なり厚みをもつ巨視的な三次元構造であることから、空間・表面の両方を制御して物性を引き出すことが可能である。研究代表者・早瀬はこれまで主にマクロ多孔体(細孔径50 nm以上)について、断熱材などへの可能性を検討してきた。多孔体の物性はかさ密度や細孔径を変化させることで制御可能であるが、これまでは出発組成を変更して構造を変えていく方法が主であった。最近、多孔体の構成パーツとしてナノファイバー・ナノチューブ・ナノワイヤーといった一次元材料が注目されている。微細な繊維で構成される多孔体は原理上クラックが入りにくく、押し潰すことで厚みやかさ密度を調整することが可能である。早瀬はアルミニウム酸化水酸化物・ベーマイト組成のナノファイバーを用い、最低1.2 mg cm^-3という超低かさ密度エアロゲルの作製に成功している。この材料は10 mm厚・90 %以上の可視光透過率およびおよそ1.001の低屈折率というユニークな光学特性をもっている。内部に材料を分散・固定することができるため触媒やセンサー材料の担体としての利用が見込まれる他、細孔制御や複合化によりエアロゲル断熱材への応用が考えられる。本研究はまずナノファイバーを用いた多孔体の作製法改善に取り組み、さらに単一ゲルを加工してさまざまな物性をもつ材料に仕上げる技術の確立に挑むものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題でのひとつの目標に、圧縮変形を用いて密度・細孔径を変化させることで熱伝導率制御を狙うものがあったが、研究開始から間もない段階で他の一次元材料を用いた類似内容の論文が海外グループから出てしまったため計画を見直した。当初は自身の既発表材料を用いて変形による物性変化を調べるつもりであったが、「加工」だけでは新規性が乏しくなってしまうため、ベースとなるベーマイトナノファイバー多孔体の作製手法をより磨き、簡潔にする研究に注力した。 試行錯誤の結果、湿潤ゲルの凍結乾燥法により厚さ5-7 mm程度の透明モノリス体(クライオゲル)を作製することに成功し、この材料中に蛍光色素を分散させることで光学材料として用いることができることを確認した上で論文にまとめた。従来、凍結乾燥法で得られるモノリス体は不透明であることが常識であったため、ナノファイバー多孔体だからこそできることを新たに発見したといえる。しかし超臨界乾燥法を用いた既発表材料(エアロゲル)に比べて本手法で得られる材料は力学強度が小さく、圧縮変形に用いることが困難であった。簡易な乾燥法での高強度ベーマイトナノファイバー多孔体作製にはまだハードルがあるといえる。本研究課題においてはエアロゲルを用いて研究を推進した方が好ましいという結果を得た。 ナノファイバーを用いた複合材料の研究も進めており、こちらは未発表ながらも予想以上の成果が得られている。有機樹脂内にナノファイバーを組み込んだ強靱な多孔体ができるなどこれまで報告されていない結果が出てきており、数ヶ月以内には対外発表できる段階にきている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにベーマイトナノファイバークライオゲルの研究を中断して、エアロゲル研究に回帰する予定である。平成29年度には小型の超臨界乾燥装置を導入したため、3 cm角・径のエアロゲルの作製が自前で可能になった。円柱状の透明エアロゲルについて力学特性を調べ、まずは圧縮変形時における可視光透過率および屈折率の変化に関して検討していく予定である。当初計画していたエアロゲルを圧縮しての熱伝導率変化に関しては外部機関における複数回の測定が必須となるため、研究がある程度進行した段階で予算・期間的に可能であるかを判断する。初期計画とは多少異なる研究推進方策となってきてはいるが、量・質とも概ね想定通りの成果が得られるよう研究を遂行する。 ナノファイバーを用いた複合材料に関しては、早い段階で作製条件と基本物性に関して論文にまとめる予定である。特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂との複合化に注力し、特異な力学特性の評価と応用性について多方面から詳細検討していく。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも年度内の消耗品購入が少なく済んだため、次年度での購入分に充てる。
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Research Products
(6 results)