2017 Fiscal Year Research-status Report
表面電子状態に着目した電極材料開発:キャパシタの高容量化に向けた新規アプローチ
Project/Area Number |
17K14543
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
石井 陽祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80752914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 電気二重層キャパシタ / 電荷移動 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、電気二重層キャパシタにおける電極の表面電子状態とキャパシタ容量の関係を明らかにすることである。本年度は、表面電子状態を制御した電極試料として分子内包カーボンナノチューブの作製と基礎的なキャラクタリゼーションを実施した。 本実験系では、カーボンナノチューブと内包分子の間に電荷移動が発生する。内包分子の種類を変化させることで、カーボンナノチューブ表面の電子状態のコントロールを実現する。本手法では、電気二重層形成(電解質イオンの吸着)の場となるナノチューブ外表面の構造・組成は一切変化しないので、電子状態の効果だけを純粋に抽出して議論することが可能となる。 本年度は平均直径の異なる2種類の単層カーボンナノチューブ(直径1.5nmと2.5nm)に対して、真空昇華法によるフラーレン(C60)、フッ化フラーレン(C60Fx)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、9,10-アントラキノン(AQ)、フェロセン(FeCp2)分子の内包を実施した。 得られた試料について、電子顕微鏡による直接観察、粉末X線回折、蛍光X線分析、X線光電子分光分析、熱重量分析を実施し、ねらい通り内包されていることを確認した。さらに単層カーボンナノチューブ‐内包分子間の電荷移動の方向・程度を評価するため、ラマン分光測定とゼーベック係数測定を実施した。C60Fxを内包した単層カーボンナノチューブで、特に顕著な電荷移動反応が起こっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した初年度の実施内容は分子内包カーボンナノチューブの合成である。 実施計画・方法欄には、具体的な研究項目として次の4つの実験を行うと記載した。 (1)内包分子(ゲスト)の選定、(2)カーボンナノチューブ(ホスト)の作製、(3)カーボンナノチューブ内への分子導入、分子内包カーボンナノチューブの構造評価 初年度は、いずれの項目についても遅延なく実施することができた。このため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で得られた内包カーボンナノチューブに対して、サイクリックボルタモグラム(CV)測定、定電流充放電測定、交流インピーダンス測定などの電気化学的な分析を実施し、電気二重層キャパシタとしての電極特性を明らかにする。また、分子内包によるカーボンナノチューブの電子状態を、X線光電子分光(XPS)、ラマン分光などの実験的な手法を用いて評価する。 これらの実験を通して電極の電子構造と電気二重層容量の関係を整理し、本研究のテーマである「電極の電子状態が電気二重層形成に与える影響・程度」を議論する。
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