2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of direct deposition for porous structure based on molten-metal dynamics analysis with particle method
Project/Area Number |
17K14574
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小池 綾 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (70781417)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 指向性エネルギー堆積法 / ポーラス金属 / 付加加工 / 粒子法 / シミュレーション / 発泡助剤 / ステンレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,金属材料に対応可能な3次元造形技術である指向性エネルギー堆積法の新たな応用法として,ポーラス金属複合造形法の確立を目指している.指向性エネルギー堆積法は,レーザによって母材上に生成したメルトプールに材料粉末を加えることで造形するプロセスである.また,ポーラス金属は多孔質構造によって軽量,高比剛性,振動吸収,防音,遮熱,電磁遮蔽など優れた特性を持つ材料だが,現行の製造プロセスが煩雑であり,実用化されにくい.本研究において,指向性エネルギー堆積法において発泡助剤を利用することでポーラス金属製造の大幅な工程集約を実現する.さらに,二相混合流シミュレーションによるキャリブレーションを合わせ,提案プロセスの最適化を同時に目指す.従来のポーラス金属製造方法と比較すると,提案手法はたった一工程でポーラス金属を製造でき,空孔分布のばらつきを抑えられ,複雑形状に容易に対応できるなど,ポーラス金属材料の応用可能性を大幅に向上させることで,あらゆる大型製品の機能性を飛躍的に高める点で非常に意義深い. 本研究は2カ年の実施を計画しており,初年度において,指向性エネルギー堆積法において発泡助剤の適応可能性を評価する基礎実験を遂行すること,気液混相流シミュレータを開発することを目指していた.まず,指向性エネルギー堆積法において粉末材料に発泡助剤を混入し造形した結果,水素化チタン粉末6 wt%でメルトプールが十分に発泡することがわかった.多様な材料配合を試した結果,増粘剤として酸化カルシウム,表面活性剤としてテルルを加えて造形したときに,最大で46%の空孔率を持つ発泡ステンレスの作製に成功した.一方でシミュレータの作成は遅れており,粒子法のための並列計算システム構築に多くの時間を要してしまった.この遅れを本年度で埋め合わせ,プロセス最適化によってさらに空孔率を向上させることを目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポーラス金属材料について,アルミ合金は80%以上の空孔率を実現する製造技術がある一方で,ステンレスなどの鉄系合金は溶融時の表面張力が高く溶融・凝固時にポーラス構造を保持することが難しい.その結果,鉄系合金のポーラス化に関する研究は少なく,最大でも30~40%の空孔率を達成したとする文献が見つかるのみであるため,本研究の基礎実験期間において当初は10%程度の空孔率を実現することを目標としていた.しかし,指向性エネルギー堆積法は溶融から凝固までの時間が鋳造などと比べて非常に短いため,本提案手法はメルトプール内に多くの気泡を保持したままの構造を残すことができ,鉄系合金でであっても非常に高い空孔率を実現できることがわかった.現時点ですでに46%の空孔率を達成できている点で,当初の計画よりも大幅な進展があったと判断している. また,気泡サイズが1層当たりの積層高さよりも大きいものが多く表れ,当初想定していたマイクロオーダの気泡発生とは異なる発泡現象が生じることも明らかとなった.空孔率をより高めるためには,気泡を小さいままに保持することや,冷却効率をより高めることなど,新たな課題も明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では,2カ年目に直接封入法による空孔率の向上を考えていたが,すでに気泡は十分に発生しており,メルトプール内から如何に排出されないようにするべきかが課題であることがわかってきた.直接封入法のために気泡注入チューブの作製を計画していたが,溶融金属の表面張力を下げることや冷却速度を高めることなど気泡を外部に逃がさないプロセスそのものの工夫をした方が,より高い空孔率を得るために効果的であると考えられる.増粘剤や表面活性剤として,酸化クロムやセレンなどの未調査な添加剤がまだ多くあるため,これらの粉末材料の購入に研究資金を当てたい. シミュレータの開発はまだ表面張力の解析など実現象をうまく再現できず,開発が遅れているが,もとの計画通り開発を進め,表面張力や粘性,温度変化が気泡の生成や残存に与える影響を理論的に明らかにしていきたい.
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